「天然記念物の泉にコインを投げ込み…」「民家への不法侵入も」 やりたい放題なインバウンド観光客たち
各地独自の取り組みも
されど人手不足を嘆いている場合ではない。考えるべきは打つ手である。
「とにかく多くの人に来てもらうという方針を見直して、訪日観光者の人数を抑制することです」
とは、交通政策・観光政策を専門とする、桜美林大学の戸崎肇教授だ。
「観光税を導入するのも一つの案です。来日のハードルが少し上がり、訪日客も抑制されるでしょう」
それは人手不足の解消にもつながるという。
「観光税による収入をもとに、例えば観光客が優先で乗れるようなバスを税金で運営することもできます。バスの運転手不足が深刻な状況にあることに鑑み、税収から補助金を業者に助成して、運転手の待遇好転につなげることも可能です」
お上の対応を待ってはいられないとばかりに、事業者も独自の取り組みに乗り出している。全国にその名を知られる沖縄の「美(ちゅ)ら海水族館」の話。
「観光客の増加に備えて、アルバイトを増やしました。駐車場の収容台数増も実施して、レンタカー利用の人が困らないようにしたところ、周辺の混雑が比較的スッキリしましたね。飲食店に人が入り切らないこともあったため、キッチンカーを入れて対応しています」
さらに、こんなことも。
「言葉の心配についても、今は通訳サービスへの外部委託で対応中です。外国語を喋れるスタッフがいなかった際、そこに連絡すれば、そちらのスタッフが電話越しに通訳してくれます」
“薄利多売”を見直す時期に
冒頭に紹介した江ノ島でも、住民に一筋の光明が。
「改札を優先的に抜けられるパスを地元の方々に出す取り組みを、鎌倉市さんの方で始めています。ちょっと買い物に行くのに30分待ちなんていうことが回避できます」(江ノ電の駅員)
先の戸崎教授が総括する。
「日本の旅行産業は今なお“薄利多売”という考え方が主流です。しかし、本当に価値のあるものに適切な対価を払ってもらうという、本来あるべき旅行産業のあり方へと舵を切っていく必要があるでしょう。中国人観光客が増えるのはこれからですし、旅行への渇望感が弾ける形で間違いなく訪日観光客は増えていく。これらは国や自治体、観光業界だけでなく、日本全体で考えていかなければいけない課題だと思います」
対策はお盆までに、年末年始までに、と悠長なことは言っていられない。外国人は今日も明日も、日本を目指し大挙してやってくる。
[6/6ページ]