火葬費に「燃油サーチャージ」がかかる東京23区 なぜ1万円以上に?

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 燃油の高騰で昨今は海外旅行にかかるサーチャージもバカにならない。ところが、東京では“あの世”に旅立つのにもサーチャージが掛かってくるのをご存じか。

「桐ヶ谷斎場」や「町屋斎場」など、東京23区における火葬の約7割を担う東京博善が、従来の火葬料金の他に燃料費特別付加火葬料(サーチャージ)を徴収するようになったのは、昨年の6月から。最初は7600円だったのが、8800円、1万200円とじりじり値上がりし、昨年12月にはついに1万4600円にまで達した(現在は1万2200円)。これに通常の火葬料がかかるため、同社の火葬場では、遺体を焼いてもらうだけで9万円近く掛かることになる。

東京23区は民間企業が大半

 それにしても、サーチャージと称して別料金を徴収するのは業界の“常識”なのだろうか。

 火葬場の運営などについて調査研究を行っている一般社団法人「火葬研」の武田至代表理事が説明する。

「私の知る限り、サーチャージを取っているのは東京の民営火葬場だけです。過去にも覚えがありません。しかも、たとえば多摩地区にある公営の火葬場では、サーチャージは取っていない。同じ東京でも亡くなる場所によって火葬の値段が違うのです」

 そもそもわが国において、火葬場は公営が圧倒的に多く、東京23区のように民間企業が大半を占めているのは例外的だ。これには歴史的な事情がある。

「明治維新で政府が廃仏毀釈(きしゃく)を行った際、仏教寺院から火葬事業を取り上げて、神社にやらせたのです。そして、火葬を宗教活動から切り離した。その結果、東京では火葬を手掛ける業者が生まれて現在にいたった。一方で、地方においては公衆衛生の観点から国が主導して土葬から火葬に転換させたという背景があります」(同)

 かくて、東京では火葬料の決定も民間企業の手に委ねられたわけだが、やはり気になるのは三途の川の渡し賃、もといサーチャージの行方である。

 そこで東京博善の親会社である広済堂ホールディングスに聞くと、

「ご遺体を火葬に付すための燃料代だけでなく水道光熱費などの高騰もあります。いつサーチャージをやめるのかは申し上げられませんが、なるべく早くにと考えています」

週刊新潮 2023年5月18日号掲載

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