パドレスと6年1億800万ドル……ダルビッシュ「異例の長期契約」の謎を解く
MLBアジア市場拡充のキーパーソン
5月18日（日本時間）に行われたロイヤルズ戦で6回途中、6安打4失点で降板。なかなか今季3勝目に届かないパドレス・ダルビッシュ有（36）だが、今シーズン前に「6年1億800万ドル」（約140億円）という、異例の長期契約を結んだ真相が見えてきた――。
パドレスは2024年、韓国で開幕戦を行う。対戦チームは同じナ・リーグ西地区のドジャースだ。これまで日本の東京ドームなどでも「MLB公式戦」が行われてきたが、対戦カードは有名・人気チームvs下位球団という図式だった。しかし、パ軍とド軍といえば、地区優勝を狙う強豪チーム同士。そのチームが対決する開幕戦となれば、米国内でも満員となるだろう。
「実現すれば、韓国国内でのMLB公式戦開催は史上初。パドレスには今年3月のWBC韓国代表にも選ばれたキム・ハソン（27）も在籍しており、ドジャースは韓国人初のメジャーリーガー、パク・チャンホ氏（49）がデビューしたチームとして認知度の高いチームです」（スポーツ紙記者）
また、同カードで25年開幕戦が、日本で行われる予定になっている。
「24年開幕戦」は現在、詳細をつめている段階だが、MLBは韓国側と折り合いがつかなければ、その代替地として日本を予定しているという。2年連続での日本開催の可能性は米メディア「ジ・アスレチック」などが報じていたが、そうなった場合、アジア市場拡充のキーパーソンとなるのは、ダルビッシュだ。
「開幕戦のマウンドに、ダルビッシュが立つ。これだけで注目度は抜群でしょう。今春のWBCで『ダルビッシュ人気』を再認識させられました。日本代表監督の栗山英樹氏（62）も後日談として、『ダルビッシュのチームだった』と話していましたしね。日本の選手たちは自然と彼の周りに集まり、ファンもダルビッシュがリーダーとなっていたチームを歓迎していました」（前出・同）
彼の最大の武器である変化球の握り方やそのコツを惜しみなく、侍ジャパンの投手たちに教えていた姿は、関係者の脳裏に焼き付いている。卓越した投球理論と練習熱心さで日本の後輩たちに慕われたのである。
長期契約の仕掛け人
「異例の長期契約」が結ばれたのは、今年2月。WBC侍ジャパンの強化合宿に参加する直前のことだった。ダルビッシュ自身、開口一番に出たセリフは、「自分でも驚いている」だった。
契約が提示された背景には、パドレス・ゼネラルマネージャー（以下＝GM）のA.J.プレラー氏（45）の存在があったという。
プレラーGMは、ダルビッシュがMLBでのキャリアをスタートさせたレンジャーズの元幹部だ。獲得交渉にも関わっており、ダルビッシュの才能を高く評価していた。新たに6年、42歳になるシーズンまでの長期契約を持ち掛けた理由を問われ、
「彼はスピードとパワーだけでない。たくさんの武器を持っている。契約期間中、ずっとトップクラスの投手であり続けると信じている」
と言い切った。その言葉を証明するようなピッチングをダルビッシュが見せたのは、5月5日（現地時間）のドジャース戦だった。
「言うまでもなく、ダルビッシュは多彩な球種を持つ変化球投手です。調子が悪いときでも、その日に通用しそうな変化球を見つけ、そのボールを中心に配球を組み立て直します。さらにその中心となった球種によって、効果的に使える変化球も見つけ、対戦打者を惑わしていきます」（米国人ライター）
同日、ダルビッシュが「効果的」と見た球種はカッター。球速は直球に近く、打者の手元で小さく鋭く曲がる変化球で、それとは対照的に曲がり幅の大きい変化球も織り交ぜ、相手バッターを混乱させていた。
6回3分の2を投げ、2失点。今季2勝目を挙げた。来季開幕戦の対戦チームであるドジャースから「日米通算190勝の節目の勝利」をおさめたのも何かの縁なのかもしれないが、ダルビッシュの変幻自在なピッチングは、WBC代表メンバーでもあるキム・ハソンのチームメイトということで韓国でも一目置かれていた。
「韓国野球委員会（KBO）の役員幹部たちは、定期的にMLB機構を訪ねています。その割合は日本よりも高い。米オールスターゲームを韓国で開催してほしい、あるいは、MLB選抜チームの訪韓などを訴えていました。24年のパドレス対ドジャースの開幕戦にしても、当初は『韓国プロ野球のLGツインズ対KIAタイガースの開幕戦をロサンゼルスで開きたい』と言ってきて、MLBの関係者をビックリさせたんです。ですが、KBOの試合開催を進めるよりも、MLBのアジア市場拡大の計画に乗ったほうが、開幕戦実現の可能性が高いと踏んだのでしょう」（在米ライター）
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