巨人、このままでは“長期低迷”に陥る…球団内部からは「育てながら勝つのは現実的ではない」と若手抜擢を願う声

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将来性を重視した戦略

 野手では、秋広と中山の高校卒3年目コンビが一軍に定着しつつある。特に秋広はたびたびスケールの大きさを感じさせるバッティングを披露している。ルーキーの門脇は、打率1割台(5月15日現在)と低迷しているものの、慣れないサードで素晴らしい守備を見せ、既に一軍には欠かせない選手となっている。このほか、現在二軍で多く出場機会を得ている萩尾や浅野も成績を伸ばしている。彼らが順調に育ってくれば、将来に向けての景色はだいぶ明るくなってくるだろう。

 近年の巨人のドラフトによる成果と今後の方針について、スポーツ紙記者は以下のように話す。

「FAや外国人での補強が年々苦しくなっていることは、首脳陣も当然理解していると思います。このため、ここ数年は坂本や岡本のように、高卒でチームの大看板になれるようなスケールの大きい選手を狙う方針になってきました。秋広もその1人ですし、昨年もイヒネ・イツア(ソフトバンク1位)を狙おうという話もあったと聞いています。最終的には浅野に落ち着きましたが、投手が苦しい中でも、即戦力が期待できる社会人や大学生の投手をドラフト1位で指名しなかったのは、こうした姿勢の表れだと思います。将来を考えても、この方針が続いていくかが重要です」(在京スポーツ紙記者)

 昨年も浅野が1位、萩尾が2位と野手がドラフト上位を占めた。一昨年は投手中心の指名だった点を考慮しても、思い切ったドラフトだったといえる。今後も将来性を重視した戦略が続くのか。

「早めに若手を引き上げるべき」という意見も

「今年は、大学生の投手が特に豊作と言われていますが、高校生にも、佐々木麟太郎(花巻東)と真鍋慧(広陵)というスラッガーがいます。彼らは飛ばす力は抜群ですが、ともにファーストの選手で、守備が上手くありません。それを考えると、指名打者のあるパ・リーグ向きという声も多いですが、今の巨人なら思い切って狙う可能性があるかもしれません。スターを求めているだけに、昨年の浅野のように、夏の甲子園に出てホームランを打てば、一気にその機運も高まるのではないでしょうか」(前出のスポーツ紙記者)

 補強に加えて、もう一つ重要になりそうなのが起用法だ。良い素材を獲得してもなかなか抜擢できないというのはよくある話だが、特に巨人は以前からこうした傾向が強いイメージがある。ただ、そんな巨人の体質に対して、球団内からも疑問の声が出ていると球団関係者は語る。

「巨人は優勝を宿命づけられた球団だから育てながら勝たないといけない……とよく言いますが、今のチーム状況を考えると現実的ではありません。2019年からはセ・リーグを連覇しましたが、日本シリーズではソフトバンクに全く歯が立たず、過去2年間は勝率5割にも届いていません。今年も同じような状況が続くのであれば、早めに若手を引き上げるべきという意見も球団内で多くなってきています。秋広が出てきたことを良いきっかけにして、残りのシーズンでもどんどん若手に切り替えるべきではないでしょうか」(球団関係者)

 このままでは長期低迷の恐れも浮上しそうな巨人。将来へ向けて大胆に舵を切ることができるのか。今後の動向に引き続き注目していきたい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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