神戸山口組の井上組長宅に17発を発射した男が語っていること

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組長宅の塀を乗り越えようと

 昨年6月、神戸山口組の井上邦雄組長(74)の自宅の門扉を銃撃して壊したとして、銃刀法違反や建造物損壊などの罪に問われた6代目山口組系組員・林雄司被告(50)に対し、5月12日、神戸地裁は懲役10年(求刑懲役13年)の判決を言い渡した。林被告は公判で明確に「抗争終結のための犯行」と動機を語っていたが、この言い分を裁判官はまったく認めなかった。あくまでもそれはヤクザの理屈に過ぎない、と一蹴された格好だが、被告側はどういう展開を考えていたのだろうか。

 事件を振り返ってみよう。

 林被告は6代目山口組の4次団体、2代目川合組(本部・岐阜市)に所属し、舎弟の身分だった。

 その林被告は昨年6月5日午後2時過ぎ、兵庫県神戸市北区鈴蘭台にある井上組長宅に向けてリボルバーで17発を発射し、金属製の扉を損壊した。

「車両の上に乗って、組長宅の塀を乗り越えようとしていたこともわかっています。運悪くと言うか運良くと言うか、その場で滑って転んだことで自宅への侵入は果たされなかった模様です」

 と、担当記者。

相当な忠誠心

 元山口組系義竜会会長の竹垣悟氏(現・NPO法人「五仁會」主宰)はこう語る。

「のちに井上組長は林被告の動きを伝え聞いて、“単なる威嚇ではなく生命を狙われていた”ことを認識したようです。もちろん6代目山口組とは抗争状態にあるわけですが、それ以前に自宅や自身の周辺にヒットマンが現れたことはなかったので、これで井上組長側に緊張が走ったことは間違いないでしょう」

 林被告は公判で、「井上組長を引退させ、抗争を早く終わらせたかった」と犯行の動機について明かしている。

「林被告の兄貴分に当たるのは2代目川合組・北村和博組長。林被告の北村組長への忠誠心は相当なものだったようです。一度、岡山での抗争事件で逮捕されたものの不起訴処分となりました。そこから再度、組事(くみごと:組織のために生命を賭けて懲役に行くこと)を背負って犯行に及んだというのは、被告からすれば組織への強い思いのあらわれということになるのでしょう」(同)

 組織の側もその「思い」を受け止めたようで、裁判の傍聴には北村組長の他、川合組の上部団体である野内組から西川純史舎弟頭、浅野宏隆若頭補佐が顔を見せていたという。

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