東京郊外にある大物次官の行きつけのスナックで人事を密談、子飼いをゴリ押し…【国交省OB人事介入の闇】

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国交省OBが空港施設社長という慣例

 そもそも空港施設とはどんな会社なのか。東証プライム上場で、空港の施設や機能を管理・運営する民間企業であり、大株主は日本航空(JAL)と全日本空輸(ANA)で、ともに約20%を持つ。1970年 の設立以来、社長は前任の甲斐正彰氏が退任する2021年まで、一貫して国交省OBが務めてきた。そのこと自体、客観的に見ればおかしなことなのだが、慣例として誰もが受け止めていたのである。

 ここで国交省とJAL、ANAの関係を整理したい。JALは日本の国策航空会社の形で戦後、設立されており、いわば国交省にとっては「身内同然」の存在であった。いっぽうANAは戦後、民間のヘリコプター会社からスタートし、自主独立で業容を拡大してきたプライドと、JALに対する強烈なライバル意識がある。だがこの力関係は、2010年のJALの経営破綻で様変わりする。

 JALは2010年に会社更生法を申請し、政府系機関である企業再生支援機構の支援でリストラと経営再建を進めた。その途上にあった2013年、羽田空港の国際化に伴い、新たに国際線発着枠が航空会社に割り当てられることになった。「ドル箱路線」となる羽田の国際線発着枠は、1つでも多くほしいのが各航空会社の本音だった。だがこの時、国交省はANAに対し「11」と、JALの「5」の倍以上を割り当てた。これは「公的支援によって航空会社間の競争環境が不適切に歪められていないか等を確認する」(国土交通省、2013年10月2日付け広報資料)、つまり公的資金を使った企業再生支援機構による支援を割り引いて、JALとANAとのバランスをとった結果の末の数字であった。

 だがJALは納得できず、国交省に対し異例の不服申し立てを行い、記者会見まで行った。その際に登壇したのが当時の植木義晴社長(現会長)と乘田俊明常務、現在の空港施設社長である。当然ながら申し立ては却下され、この時点で「JALと国交省の蜜月は終わった」といえるだろう。その後、羽田空港の発着枠はJAL再建とともにANAとほぼ均等に収斂されはしたが、「国交省の言いなりにはならない」という意思は両社とも強まったに違いない。

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