藤浪晋太郎、弱小球団で平均年俸以下でも「猛バッシング」のナゼ NPB選手「争奪戦」で代理人抗争の“とばっちり”
ボラス一人勝ちにライバル代理人は危機感
米大リーグ、アスレチックスの藤浪晋太郎(29)が乱調に陥るたび、米メディアによる猛バッシングは“お約束”になっている。「球史で最悪の先発投手の1人」「2023年で最悪の契約だったことをメジャーリーグで示し続けている」などと、これでもかとばかりに記事には辛辣な言葉が踊る。
アスレチックスはア・リーグ西地区で最下位を独走する。スター不在で、5月15日の本拠地でのダイヤモンドバックス戦では観客動員が2064人と記録的な不人気にもあえぐ。名ゼネラルマネジャーだったビリー・ビーン氏の「マネー・ボール」で名を馳せたコスパ重視のチームで、藤浪の375万ドル(約4億4000万円)は5番目の高年俸とはいえ、MLBの昨季平均422万ドルにも及ばない。毀誉褒貶は年俸の額に準じるとされるMLBで弱小球団の一投手が、なぜこれほどまでにバッシングを受けるのか。
その謎を解くにはアスレチックスとの契約時にまで遡らなければならない。昨季まで阪神に在籍した藤浪は近年、好成績を残せていなかった。MLB球団からNPB球団への譲渡金が発生するポスティングシステムによる移籍だったため、交渉の成立さえ危ぶまれた。それだけに、合意に至った際は“吸血鬼”の異名を取る辣腕代理人、スコット・ボラス氏の手腕が脚光を浴びることになった。
ボラス氏は藤浪との契約前、オリックスからポスティング移籍を目指していた吉田正尚を担当し、日本人野手最高額の5年総額9000万ドル(約126億円)でレッドソックス入りをまとめ上げた。と同時に、日本選手で好契約を連発したボラス氏はライバル代理人に改めて脅威であることを印象づけた。
「選手はより良い(MLB球団との)契約を求めるもの。吉田、藤浪が宣伝材料になり、今後ボラスに日本人選手を奪われるのではないかと他の代理人たちが危機感を強めた」(米大手マネジメント会社の代理人)
各代理人にはそれぞれ懇意のメディア関係者とのパイプがある。
「例えば、ある選手で交渉中のメジャーの球団から金銭面をつり上げるため、報道を通してライバル球団の存在をちらつかせるなどする。協力した代わりに合意時には真っ先に情報を流す、持ちつ持たれつの関係が至る所で結ばれている。その中にはボラスの足を引っ張りたい代理人、メディアが少なくない。不振の藤浪は格好のターゲットになっている」(駐米ジャーナリスト)
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