まだ4月なのに夏ドラマが次々と発表された特別な事情 宣伝担当者の知られざる苦労が

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逆に制作発表は遅くなった

 逆に遅くなったのは、出演者が登場する制作発表。TBSが放送している今年の春ドラマの場合、福山雅治(55)主演の「ラストマン―全盲の捜査官―」、橋本環奈主演の「王様に捧ぐ薬指」、山田裕貴(32)主演の「ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と」の合同制作発表が、4月8日に行われた。3作品の放送開始月に入っていた。

 以前は違った。同じTBSで財前直見(57)が主演した1995年の春ドラマ「ジューン・ブライド」の場合、制作発表は同3月1日に行われた。放送開始は同4月14日だった。

 当時の制作発表は多くが放送開始から約1カ月前に行われていた。ホテルの宴会場で豪勢に行われていた。だが、1990年代後半から制作発表の開催時期は徐々に遅くなっていった。

 どうして遅くなったのか。あまり早くやると、放送開始までに視聴者の記憶が薄らぎ、宣伝効果が低下してしまうからである。現在の新作連続ドラマ発表のトレンドは「内容の発表は早めに」「制作発表は遅めに」だ。

 NHKに目を移すと、大河ドラマは伝統的に発表が早い。吉高由里子(34)が主演し、大石静氏(71)が脚本を書く、来年1月スタートの「光る君へ」は昨年5月11日に発表された。放送開始の1年7カ月前。随分と急いでいるようだが、いつも通りのスケジュールだった。

 大河ドラマは脚本家が資料の読み込みなどを始める時期に発表されるのが通例。放送開始まで間があるので、ピンと来ない視聴者も多いかも知れないが、その代わりに共演者が小出しに明かされる。早い発表を宣伝戦略に生かしている。

 連続ドラマの成功に向けて苦労しているのは、制作者だけでなく、宣伝担当者も一緒なのだ。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。大学時代は放送局の学生AD。1990年のスポーツニッポン新聞社入社後は放送記者クラブに所属し、文化社会部記者と同専門委員として放送界のニュース全般やドラマレビュー、各局関係者や出演者のインタビューを書く。2010年の退社後は毎日新聞出版社「サンデー毎日」の編集次長などを務め、2019年に独立。

デイリー新潮編集部

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