まだ4月なのに夏ドラマが次々と発表された特別な事情 宣伝担当者の知られざる苦労が

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テレビ誌以外にも理由はある

 5年前の2017年の時点でテレビ誌の月刊誌化の流れはほぼ固まっていたが、それでも新作連続ドラマの発表は現在よりはやや遅かった。渡辺直美(35)主演のTBS「カンナさーん!」は5月11日、福士蒼汰(29)主演の日テレ「愛してたって、秘密はある。」は同15日、窪田正孝(34)主演のフジ「僕たちがやりました」は同28日。高畑充希(31)が主演した日テレ「過保護のカホコ」は6月4日だった。

 発表が早まった背景にあるのはテレビ誌の問題だけではない。放送記者クラブに所属する6つのスポーツ紙には大型インタビュー欄があり、局側としては、ここに夏ドラマの主演俳優らのインタビューを掲載したいからだ。インタビューは各紙のウェブ版にも転載されることもあり、宣伝効果が高い。

 インタビュー掲載の決定権は言うまでもなくスポーツ紙側にある。局側が掲載を望む場合、発表が早いほうがスポーツ紙側との交渉に時間がかけられる。また、各紙のインタビュー記事の掲載頻度は週1回程度しかなく、2カ月ほど先まで人選が決まっていることも珍しくない。早めに話を始めたほうが有利なのだ。

 もう少し過去も振り返ってみたい。2012年の夏ドラマの場合、向井理(41)主演の「サマーレスキュー~天空の診療所~」は同6日。井上真央(36)主演の「トッカン 特別国税徴収官」は同11日。小栗旬(40)主演のフジ「リッチマン、プアウーマン」は同20日、俳優、上川隆也(58)主演のテレ朝「遺留捜査」第2シリーズも20日だった。発表は5月に集中していた。

 現在では夏ドラマの4月中の発表が珍しくないどころか、秋ドラマの一部も早々と明かされる。フジは向井理が主演する秋ドラマ「パリピ孔明」の放送を5月1日に発表した。

 春ドラマの放送前半に夏ドラマの発表ラッシュとなり、秋ドラマも明かされる。ドラマ界の宣伝戦略は様変わりした。

 新作連続ドラマの発表が早くなった背景にはネットメディアが増え、一般化したこともある。ネットメディアが局側による発表前に新作連続ドラマ情報を報じるからである。

 テレビ誌は新作連続ドラマの情報を得ようが、それを誌面に反映させることはない。局側と運命共同体のような関係にあるからだ。放送記者クラブに加盟する新聞・スポーツ紙もまず書かない。暗黙の了解がある。

 だが、ネットメディアや雑誌の中には報じることもある。話題性の高い作品の場合だ。局側としては書かれる可能性があると思ったら、先に発表してしまおうと考える。そのほうが宣伝戦略を練りやすい。

 新作連続ドラマの情報を伏せておければいいのだが、それは至難。主演と脚本家は約1年前に決まっているからだ。その情報は徐々に広まる。まずライバル局関係者。どの業界も同じだが、各局はライバルの動向を常に探っている。

 さらに芸能プロダクション関係者。所属俳優の出演の有無にかかわらず、やはり詳しい。芸能プロ関係者も各局のドラマ事情に精通していないと、戦略が立てられないからだ。

 広告代理店関係者はスポンサーを集めるから、もちろん新作連続ドラマの情報に通じている。また、新作連続ドラマに漫画や小説などの原作がある場合、その出版元の関係者たちが早々と知る。これでは情報を完全に抑えるのは不可能に近い。早めに発表しないと、情報漏れの可能性は高まる。

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