「やった方は暴行じゃなく指導のつもり」 現役力士が告発した凄絶イジメ、部屋の責任者・陸奥親方の言い訳とは
「やった方は暴行じゃなく指導のつもり」
覚悟を決めて詳細な経緯を明らかにした安西。それに対して、部屋の責任者であり協会ナンバー2の陸奥親方は何と言うか。
――暴行の事案を正式に協会に届け出ていない?
「やった方は暴行じゃなくて指導のつもり。それは家庭でもあるじゃないですか。家庭の兄弟げんかと一緒なんですよ」
――協会に届けずに部屋で解決した、と?
「部屋のことは部屋で片付けるってのは当たり前じゃないですか。それ以上ひどいことであれば報告しないといけないですけど。どこの部屋でもありますよ、兄弟げんかなんて」
暴力事件ではなく、どこの家庭でもあるような兄弟げんか、と言いたいようである。
専門家も「時代が逆戻りしたかのような危機感」
親方の主張を安西に伝えたところ、うめくように言葉を絞り出した。
「そうですか……。霧の富士が辞め、親方としては双方を納得させたつもりなのでしょうが、それでも、不祥事を隠しているのはやっぱりおかしい。こういったことを隠し続けているから、暴力やイジメがなくならないんだと思います」
スポーツ評論家の玉木正之氏が言う。
「陸奥親方が“家庭の兄弟げんかと一緒”と言ったのは、本当にそう思っているからでしょう。しかし、“家庭の問題”として不祥事を隠蔽し続けてきたことで、時津風部屋の事件では新弟子が亡くなる悲劇にまで発展してしまった。未だに暴力事件を“家庭の問題”として済ませようとしているところに、時代が逆戻りしたかのような危機感を覚えます」
現役力士である安西の決意の実名証言。それでも協会が正面から問題解決に取り組まないのであれば、相撲界に未来はあるまい。
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