「やった方は暴行じゃなく指導のつもり」 現役力士が告発した凄絶イジメ、部屋の責任者・陸奥親方の言い訳とは
何十発も顔面を…
殴られた数がいやに正確なのは、当時、メモを付けていたからである。繰り返される暴力行為の中で最もひどかったのは1月2日、夕食が終わった後のことで、
「刺身が残っていたので、霧の富士から“これ、食っとけよ”と言われていたのですが、用事が入ったので一旦席を外した。で、戻ってくると、“食ってねぇじゃねえか”と何十発も顔面を拳で殴られたのです。自分が最初に殴られたのはちゃんこをつくる場所の付近で、そこから食事をする所まで数メートルほど後ずさりしながら殴られ続け、口の中が血だらけになりました」
顔を殴る鈍い音は上の階まで届くほどだったという。
「2階のちゃんこ場で見ていた神谷さんという兄弟子が、さすがにひどすぎるということで、1階にいた勇輝さんという兄弟子を呼びに行ってくれました。その後、勇輝さんは霧の富士に注意してくれた上、自分と一緒に親方のところに話をしに行ってくれました。そこで、自分としてはもうこのままではやっていけないと思っていたので、これまでの経緯と共にその気持ちを伝えたわけです」
親方の反応に絶望
対する親方の反応は、“分かった、協会に言っておく”というものだった。
「その一方で、“暴力はダメだろう。なんでもっと早く言わなかったんだ”と、自分にも非があるような言われ方をしました。その数日後、おかみさんに呼ばれて、“協会からは、部屋の中の話し合いで解決しろ、とのことだった”と。この時、“自分は一方的な被害者なのに……”と絶望したのをよく覚えています。また、おかみさんは“ヒデ(霧の富士)だって辞めたくないんだよ”と、お互いが悪いかのような話にもっていこうとしていました」
今年1月に初場所が終わって以降、安西は親方と話し合う機会を数回持った。
「そこではいろいろと“条件”を提案されました。“ヒデが部屋の中で一番下の扱いになるのはどうだ”とか“ヒデに誓約書にサインさせるのはどうか”とか。ただ、自分としては“一緒に生活するのは無理”と言い続けました。その結果、どこかの段階で親方が“じゃあ辞めさせるか”となったのです。ただ、“さすがに断髪式くらいはやってあげねぇとなぁ”とも言っていましたが……」
霧の富士は初場所の途中から休場し、春場所は全休している。その裏で部屋では、「暴力事件」についての話し合いが行われていたわけである。
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