仮想通貨を稼ぐ「オンラインゲーム」が、なぜか“障害者”の就労支援につながる深い理由

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暗号資産にリスクはないのか

 厚生労働省の統計では、2021年の就労継続支援B型事業所の月額平均工賃は約1万6507円。ギフテックスの運営会社WellsTechの創業者、近藤貴司副社長(32)は、「作業所でゲームを取り入れている障害者は6人ほどで、月に一度、稼いだ暗号資産を売却して全利益を障害者に分配しています。障害者の収入はおおむね月数万円。ゲーム以外の収入を合わせると6~8万円になるので、大幅に高い収入を得られています」と話している。

 一方、暗号資産を巡っては、昨年、大手暗号資産取引所「FTX」が経営破綻。ほぼ全ての暗号資産の価格が暴落するなど、大きな価格変動リスクが伴うことが浮き彫りとなった。P2Eゲームも詐欺まがいの案件が多いと囁かれている。こうした状況を受けて近藤氏は、

「常にゲーム会社や提携企業と連携しながら、プレーするゲームを慎重に選定しています。もちろん、障害者はゲームで遊ぶだけで投資しているわけではないため、金銭的損失を被ることはありません」

 また、P2Eゲーム自体が、日本では法的な規制のあいまいな領域にある。ゲームの仕組みによっては景品表示法や、賭博罪に抵触する可能性があると指摘する識者もいる。ルールが明確ではないことから、国内では企業側が「グレーゾーン」で活動せざるをえない側面もある。

 それでも、障害者にとって経済的自立を得るのは重要な課題だ。

 従来のような公園の掃除や、箸の袋詰め作業では、障害者の経済的自立は覚束ない。近藤氏自身も、親族に障害者がいて、経済的自立をどう実現させるのか、未だに課題であり続けている。近藤氏がウェブに特化した作業所を作ろうとWellsTechを創業した理由も「デジタル分野の仕事は単価も高く、障害者の経済的自立に寄与できる」と感じたためだった。

 創業当時は、ウェブに特化した作業所は前例がなかったため、許認可権を持つ東京都との折衝に数ヵ月を要したが、今では入所希望者が後を絶たないそうだ。

高いデジタルスキルを持つ障害者も

 昨年、近藤氏は国内大手の仮想通貨・ブロックチェーンメディア「CoinPost」と合同で、「WAVE3(ウェイブスリー)」を立ち上げ、障害福祉の現場とweb3の融合を進める方針を打ち出した。

 作業所には、元々大手企業やデザイン事務所、アニメーターとして働きながら、職場や家庭環境の問題で障害を持ち、働けなくなった人がいるという。自宅でパソコンを扱いながらも、デジタル関連の仕事に就けない障害者もいる。

「障害者の中には非常に高いデジタルスキルを持つ人がいる。きっかけと機会、適切な支援があれば、彼らはweb3を通して社会に溶け込むことができる。障害者に自尊心を高めてもらうためにも、この事業は失敗できません」(近藤氏)

 新たなデジタル技術を利用して巨万の富を築くことが可能な時代。そうした技術は同時に、社会貢献の新たな扉を開くカギにもなり得るかもしれない。

デイリー新潮編集部

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