祖父母の「孫費用」は年間75万円! 少子化を救う「孫育て」のカギはお金?
財布の孫疲れ
さらなる問題は、孫は1人とかぎらないことです。
私の知人は、2人のご子息に3人ずつの孫がいて、毎年、誰かしらに七五三などの節句の祝い事があり、入園、卒園、入学、卒業、正月、クリスマスとお祝い金をはずんでいたら、10年間で都合1千万円が消えてしまったとか。子どもらにはそれぞれ住宅資金贈与もしていたので、虎の子の退職金はほぼ枯渇したと嘆いていましたが、典型的な「財布の孫疲れ」でした。
やむを得ず「援助」を打ち切ったら、生活水準が落ちたとして、子や孫にまで逆恨みされた祖父母もいました。このように、金の切れ目が縁の切れ目になるのを避けるには、「できる範囲」を正直に伝えることです。
定期的に「明朗会計と情報開示」もしましょう。祖父母と親が、それぞれの家計状況を把握し合い、現在とこれからの孫育てに関する費用の明細を算出します。その上で、孫育て専用の通帳を用意して金の出入りを「見える化」してください。必要であれば、祖父母から親への「貸し付け」、将来、何らかの形で返してもらう孫への「奨学金」として書面で残しましょう。「遺産の前渡し」などあり得ません。
「来てよし、帰ってよし」
ここまで詳しく孫育てにまつわる「お金のトラブル」を述べてきたのには理由があります。
「右肩下がり」の経済状況が続き、年金プラス2千万円の老後資金が必要とメディアであおられては、不安になるのは当然です。老後の暮らしの心細さと孫への情愛の間で揺れ動いて鬱(うつ)気味になる人もいます。ドライなようですが、「経済的な孫疲れ」に陥らないためには、「離れすぎず、もたれ合いすぎず、負担になりすぎず」が「孫育ての鉄則」だと心得なければならないのです。
肉体面でも同じです。「孫は来てよし、帰ってよし」で、活発な孫に更年期や老境にさしかかった祖父母が四六時中付き合うのは体力的に無理です。「いつでもどこでもOK」などと安請け合いせず、「まず3時間預かる、手伝う」ところから始めましょう。親の入院などの非常事態でなければ「ワンポイントリリーフ」以上の期待を「しない&させない」ことです。
計12年間、1日もかかさずに3人の孫たちの保育園の送り迎えをした祖父母が、卒園日に母親である娘から「孫育てをさせてあげた」と言われて愕然としたという話を聞いたことがあります。娘の仕事継続のために老親は泊まりがけの旅行にも行かず、趣味や観劇も諦めて、電動自転車の前後に孫を乗せて朝夕の通園をやり遂げました。「健康寿命」を迎えるまでの貴重な12年間を注ぎ込んだ後悔でいっぱいだったそうです。
娘にしてみれば「毎日短時間でも孫と触れ合える親孝行をした」つもりかもしれませんが、ここにも世代間ギャップがあったようです。不満は言葉で伝え、妥協点を見つけるしかありません。
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