祖父母の「孫費用」は年間75万円! 少子化を救う「孫育て」のカギはお金?
親世帯の生活費の補填
年間平均75万円。
09年のデータになりますが、この数字は、サンケイリビング新聞社が行った調査による、祖父母が子世帯(調査対象は園児がいる家庭)へ支出する「孫費用」の総額です。誕生日、節句祝いなどのイベント費用、住宅購入の資金なども含まれています。
親子近居の背景には、長引く不況で若親世代の余裕のない暮らしを老親世代の資力が下支えしている傾向がうかがえます。そう思わせるほど、子育て世代の年収は上がらず、消費税や医療費、国民年金保険料等が増え、通信費や水道・光熱費などの固定費も増加の一途で、家計が苦しいのが実情です。
老親世代は質素だった戦後の匂いが残っている頃に育ち、20代で所帯を持った頃は薄給でしたから、給料が上がるまでは親たちから生活費の援助を受けた記憶があります。それがとてもありがたかったので、わが子の家庭にも援助してやりたいと思うのでしょう。
しかし、現在の物価上昇率を考えれば、「孫費用」の中には、実は孫を育てる親世帯の生活費の補填が見えにくい形で上乗せされていると思われます。
クレジットカードに家族カードをプラスして、若親世帯の通信費やガソリン代、スーパーの買い物代を本会員である祖父の口座から自動引き落とし払いにしているケースも多いとか。親世帯は実収入以上の暮らしぶりになっているわけですが、必要経費となればジジ・ババは「援助」を打ち切れません。
「かわいいおねだり」
イベントや外食などの費用もお会計の場で“とりあえず”祖父母が立て替えていると、「じいじ、ごちそうさま」と孫たちに先を越され、親には想定していた割り勘分を踏み倒されるので、孫一家と会うのが憂鬱(ゆううつ)になる人もいます。孫費用や生活援助をめぐって、祖父母世代と親世代の間に思考ギャップが生まれているようなのです。
祖父母は「爪に火を灯す」まではいかずとも、自分たちの娯楽やプチぜいたくを我慢しながら節約して金を捻出し「援助」しているのに、親の方は「遺産の前渡しだと思っている。今もらう方が役に立つ」と割り切って、はなから返すつもりはありません(老後の面倒を見るつもりもなさそうです)。
一方、孫たちの成長につれ、「かわいいおねだり」はバレエや英会話教室の月謝、私立の学校の学費に移行して、なし崩し的に祖父母が「高額援助=あげっぱなし」を続けることになります。
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