実はロシア経済は意外と堅調、それに比べ欧州経済はかなり深刻…経済制裁の代償という皮肉

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「制裁によるロシア経済の崩壊」という戦略の破綻

 ロシア経済が比較的堅調なのは、インドや中国といった新興の大国が西側諸国の制裁に同調せず、ロシア経済を支えているのが大きな要因だ。米ピーターソン国際経済研究所によれば、インドと中国への天然資源などの輸出がロシアの収入に占める割合はこれまでの25%から昨年は45%と急上昇した。

 米戦略国際問題研究所(CSIS)はさらに踏み込んだ見解を示している。4月下旬に公表した報告書の中で「『制裁によるロシア経済の崩壊』という束の間の期待は、同国の金融機関と為替相場が回復したことで打ち砕かれた。制裁はロシアの戦争遂行能力をある程度低下させているが、戦争の流れを変えることには十分ではない。戦争を速やかに停止させるという目標はもはや実現不可能だ」と結論づけた。

 国際通貨基金(IMF)が予測するロシアの今年の経済成長率は0.7%だが、この数字は0.3%の減少が見込まれているドイツや英国よりも良好な見通しだ。

「制裁によるロシア経済の崩壊」という戦略が破綻し、出口が見えなくなったロシアへの制裁は欧州経済にとって大きな足かせとなっている。

 ロシア産天然資源の禁輸措置によってエネルギー価格が大幅に上昇した。ロシアからパイプライン経由で欧州連合(EU)に供給されていた天然ガスが8割減少したため、EUは液化天然ガス(LNG)を世界中からかき集めざるをえなかった。冬場の天然ガス不足が心配されていたが、記録的な暖冬のおかげでなんとか乗り切ることができた。だが、今年の冬はさらに厳しい状況になることが予測されている。

 EU経済の屋台骨を担ってきたドイツは、ロシアの安価な天然ガスを「武器」としてきただけにダメージが大きいと言わざるを得ない。

 ドイツ政府が5月8日に発表した3月の鉱工業生産指数は前月比3.4%減と、予想以上の落ち込みとなった。3月の小売り売上高や輸出も大幅に減少することが見込まれており、第1四半期の国内総生産(GDP)はマイナスとなる可能性が高い。昨年第4半期にマイナス成長だったドイツの「リセッション(景気後退)入り」が現実味を増している。

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