家庭も心身も不調の52歳夫がジムのトレーナーと不倫を始めて“大自信”に…唯一の気がかりは彼女の部屋で知った驚愕の事実
「玲子先生」とばったり
ある日、筋トレを終えた彼は、駅の近くで一杯やりたいと考えていた。
「チェーン店で気軽にいくかと思いながら、ちょっと隣の赤提灯ものぞいたりしていると、隣にすっと人影ができたんです。見ると、トレーナーの玲子先生でした。ニコニコしながら『こっちのほうがおいしいですよ』って。一緒に行きますかと言って、赤提灯の小さな店に入りました。彼女は行きつけだったようで、『玲子ちゃん、珍しいねえ。男性と一緒だなんて』と店主に言われて照れていた。うっかり誘ってしまったけどいいんですかと聞いたら、『どうせひとりでも来てましたから』って。だったら誰でもよかったのかと思いつつ、そういうことは考えないようにしようと……」
当たり障りのない世間話をしたが、彼女は「僕の話をいちいち面白がってくれた」という。体育会系で育っているから、世間のことに疎いんですとつぶやく彼女を、雅和さんはシンプルに「いい子だな」と思ったそうだ。
「玲子先生は体育大学を出て教師になったものの、仕事が合わずに辞めてスポーツジムのトレーナーになったそうです。今は毎日が楽しいし、もっと一般の人にも健康のための筋トレを普及したいと熱く語っていました。このとき娘はすでに仕事をしていましたが、社風になじめない、人間関係がつらいとこぼしていた。実は娘も体育大学に行きたがっていたんです。でも妻がそんなところに行っても就職できないと大反対して行かせなかった。 体育大学に行ってスポーツを仕事にするのもありだったんだな、かわいそうなことをしたと感じました」
軽く飲んでその日は別れた。だが、それ以来、彼はジムに行くのがますます楽しくなったという。
「玲子先生とときどき飲みに行くこともありました。彼女はお父さんを早くに亡くしたと言っていたので、僕に父親的なものを求めているのかもしれないと思っていた。あるとき彼女から相談を受けたんです。『30歳年上の人とつきあっているんだけど、もう別れたほうがいいかなと思って』と。彼女は26歳でしたから30歳年上といったら僕より上。びっくりしました。家庭に迷惑をかけないよう静かに消えるつもりだと言った彼女の顔が妙にきれいで……。せつない恋だねと言ったら、彼女の目に涙がたまっていきました」
その瞬間、自分は彼女に恋をしたんだと思うと彼は言った。彼女が自分より年上の男性とつきあっていることがわかったからこそ、彼の中に恋心が芽生えたのだろう。
「彼女の捨て石にでもなれれば」
次にふたりで飲みに行ったとき、彼女は「別れちゃった」と泣き笑いの表情になった。彼は率直に言った。
「僕は前からあなたのことが好きだった。でも今、誘ったら、あなたの弱みにつけこむことになる。ただ、好きだという気持ちだけを伝えたいと思って。その日、彼女に送ってほしいと言われました。ワンルームのさっぱりした部屋はきれいに片づけられていて。ゆっくり時間をかけて愛し合いました。いや、彼女はたぶん寂しさを紛らわせたかっただけだと思う。でも僕はそれでいいと思っていた。彼女の捨て石にでもなれればと」
彼女はその最中、「本当は私もあなたが好きだったのよ」とつぶやいた。彼女は乱れに乱れたあと、「こんなの初めて」とかすれた声で言った。
「うれしかったですね。筋トレを始めて少しは体調がよくなったものの、心身ともに低空飛行を続けていた僕には大きな自信になった」
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