没交渉だった兄の死を知った妻は激しく動揺…更年期障害で苦しむアラフィフ夫が抱いた疑念に彼女が見せた反応は

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急に変貌したような妻

 その後は「平凡な家庭で平凡な幸せ」を享受していたと彼は言う。子どもたちが小さいころは、家族で遊園地や動物園などあちこちに行った。妻は結婚後、専業主婦だったが、そのうちパートで仕事を始めた。決して裕福ではないが、倹約しながら生活して、子どもたちは高校までは公立へ、大学は私立へと進学した。

「僕の調子がおかしくなったのは、ちょうど息子が大学に合格したころだった。仕事では嫌なことや虚しいことが続き、家庭では息子が合格してホッとし……。気持ちがついていかないところがありましたね」

 それでも、なんとか仕事は続けていたし、自分ががんばらなければ部下に心配をかけるとも思っていた。だが、今振り返れば、心の中にはさまざまな思いや迷い、葛藤があったという。

「そのころ2歳年下の妻が夜、迫ってくるようになったんです。もともと彼女はそんなに性的にオープンなタイプではなかった。なのに急に変貌したように僕には見えた。今から思えば、たぶん子どもたちが巣立つ時期が近づいているのをどこか不安に思っていたり、彼女自身が更年期を迎えて何かに頼りたくなっていたのかもしれない。あるいは性への渇望を自覚したのか。でも迫られても僕はじゅうぶん期待に応えることができなかった。なあなあで、お互いに些細な我慢を繰り返しながら平穏にやってきたのに、そのあたりで積み重なった不満が少しずつ表面化してきたんでしょうか。夫婦関係もかみ合ってないなあと思うことが増えました」

兄が亡くなったという報せ

 さらに決定的だったのは、兄が亡くなったという報せだった。あれから行方がわからなくなり、なおかつ家族の前には姿を現そうとしなかった兄だが、両親にはたまに連絡があったという。両親は雅和さんに気を遣って、そのことを隠していた。

「だから僕はずっと兄が行方不明のままなんだと思っていた。亡くなったとき、兄のそばには年上の女性が寄り添っていたそうです。結婚はしていなかったみたいだし、彼がどういう人生を送っていたのか、僕は知らなかった。両親はその女性にお金を渡して荼毘に付してもらうつもりだと言いました。これだけ長いこと音信不通だったのだから、それもしかたがないねと僕は答えた。ただ、母が『珠希さんは何か知っているかもしれないけどね』と妙な発言をしたんですよ。どういうことかと聞いたら母は口ごもった。しかたがないから妻に聞きました。兄が亡くなったのを知ってるか、と」

 すると珠希さんは目を見開いた。ただ、その目は雅和さんを見てはいなかった。もしかしたら、妻は結婚後も兄と連絡を取り合っていたのではないか、いや、会っていたのかもしれないと疑念がわいた。

「妻の両肩に手をかけて、いったい、どういうことなんだ、オレに隠れて兄と会っていたのかと激しく揺さぶってしまいました。妻は呆然としていましたが、何も言わずにくずおれて号泣したんです。関係は続いていたんだと確信しました」

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