「働かない社員」がいた方が企業は存続する? 数理物理学者が提言「社会には無駄な3割が必要」

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「一定の無駄を確保せよ」という自然からの警告

 企業活動はどうでしょうか。経済を回すのは大切ですが、回し方、経済活動の戻し方が重要で、臨界をしっかり見極めないと事故につながります。そして何よりも、これまで見てきたように3割の無駄を抱えながら進むのが結局は最も“効率的”なのです。にもかかわらず、ウイルスの猛威が収まると、また儲け至上主義に戻ってしまうのでしょうか。コロナ禍は、一定の無駄を確保せよという自然からの警告だったと思うのですが……。

 ちなみに、アリの群れから働かないアリを取り除いても、しばらくすると働いていたアリの中の3割が働かなくなるそうです。つまり、3割の無駄は自然界の摂理なのです。

 人類の歴史はたかだか20万年に過ぎない。1億年かけて積み上げてきたアリの知恵には到底及びません。生物を見れば答えはそこにある。人間の浅知恵でギチギチ詰めの社会に戻っている場合ではないと私は思うのです。

西成活裕(にしなりかつひろ)
東京大学大学院工学系研究科教授。1967年生まれ。東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。数理物理学者。専門は非線形動力学、渋滞学。山形大学工学部助教授、ケルン大学理論物理学研究所(ドイツ)客員教授などを経て現職に。講談社科学出版賞と日経BP・BizTech図書賞をダブル受賞した『渋滞学』や、『無駄学』(ともに新潮選書)等の著書がある。

週刊新潮 2023年5月4・11日号掲載

特別読物「数理物理学者が解析 実は『ムダ』が3割は必要 いよいよ『5類』ポスト・コロナ時代の『無駄学』組織論」より

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