「働かない社員」がいた方が企業は存続する? 数理物理学者が提言「社会には無駄な3割が必要」
「働かない社員がいない方が無駄」
そうはいっても、すでにカツカツの状態のうちの会社には3割のダメ社員を雇っている余裕などないと訴える企業人もいるでしょう。そこでもう一度、無駄に関する「ニつの基準」に立ち戻ってみます。目的と期間。無駄を抱えるなんて無理という企業は、往々にして、例えば「今後2年間で株主の利益を最大化すること」などを基準にしがちです。社長の交代に限らず、異動は2、3年単位で行われることが多いためです。
しかし、その2年間、平時が続けばラッキーですが、有事となってしまえば「働かないアリ」がいないので対処できない。3年後に異常事態が発生しても同じことになります。つまり、無駄をゼロにすれば短期的には得をするかもしれませんが、長期的には損をするリスクがある。
「ニつの基準」の目的を会社の存続、期間を2年間ではなく、5年、10年、50年、100年と可能な限り長く設定すると、働かない社員がいないほうが無駄なのです。設備投資と一緒で、損して得取れの精神でなければ、結局、企業は存続できません。
全員が働きづめだと「急な発注」に対応できない
加えて言えば、平時であっても、3割程度の無駄・ゆとりがなければ「急な発注」には対処できません。社員10人の企業があったとして、全員が毎日精いっぱい働いているような組織では、「みんな忙し過ぎて、急な発注なんてさばけるわけがない!」となってしまう。10人全員働きづめの「詰め込み過ぎ」企業は、急な発注を取り逃がす。これを機会損失と言います。一方、2、3人の社員が余っていたら、彼らで急な発注をこなせる。
そして、急な発注とはたいてい対価が高いもので、結局は無駄が儲けを生み出してもくれるのです。やはり半年などの短期ではなく、中長期を期間の基準にすることが企業存続の鍵といえるでしょう。そう考えると、7、8人でできる仕事量で回していくことが、結局は儲かり、企業存続という目的の達成につながるのです。
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