上沼恵美子が激白した「離婚しなくてよかった」理由とは? 3年前の“どん底”を救った夫の存在

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何十年の財産を忘れてしまう

 せやけど私の場合は、いろいろあって一周回って、やっぱりこの人しかいないと思った。人生は続くんです。ドラマは1時間、映画は2時間で終わりますが、人生は残酷です。古い亭主になり古い女房になるんですが、景色だけは新しい。その新しい景色はやっぱり一人やなしに主人と見た方がいいんです。この年になって初めて分かりました。

 主人もけんかして離婚まで言われて腹立ったと思いますけど、彼はその後も「あの時ああ言った」とか、そういうことは一切言わなかった。やっぱり夫婦は味方。一番の味方です。

 結婚って、何十年もたってくると一緒に積み上げてきた財産というか宝物を忘れちゃうんですよね。二人の時間は粗探しばかりになって、嫌な所ばっかり見えてくる。あんなオシャレだった人が「面倒くさい」と言って風呂入らないとか。あぁ、人は変わっていくなと思いますね。

 苦労してお風呂入れたら次はお酒です。酔うたら昔の自慢話が出てきます。50回、いや500回は聞いた話ですけど初めて聞くようなフリをする。こういうことができるようになったのは、ついこの間のことです。

 そんなことができるのも夫婦のキャリアですよね。すごいことだと思います。酸いも甘いも、良いとこも悪いとこも全部見てきたから、分かるんです。

愛ではなく癖

 主人が誰かと喋っていて、「上沼さん、ふるさとはどこですか?」「信州です」。

 うそつけって思いますよ。ご両親は長野の人ですけど、自分は大阪・八尾の生まれや。でも、やっぱり彼はプライドが高くてええ格好したいから「信州」って言うんです。そんなんも全部分かって、私は隣で大人しいに聞いてるわけですよ。

 今では主人も週1回といわず頻繁に帰ってきてくれるんです。長いこと同じ屋根の下で暮らしてきた人はいなくなるとやっぱり寂しい。それは愛だとかそんなんじゃなくて、癖みたいなもんです。長く見た景色が変わると落ち着かない。お手洗いは狭いから落ち着くんであって、15畳くらいの部屋に便器一つ置かれても、たぶんおしっこ出ないです。

 まあ主人と便所を一緒にしたら悪いけど、50年一緒に暮らした実績は揺るぎません。なんぼスマホやAIや言われても、そこはかないませんわ。

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 中編では、還暦直前での初婚を経験したモト冬樹さんが、晩婚のメリット、そして妻と娘への感謝を語り尽くした。

上沼恵美子(かみぬまえみこ)
歌手・タレント・司会者。1955年生まれ。中学校卒業後、71年に実姉と漫才コンビ「海原千里・万里」を組んでデビュー。77年にテレビディレクターの夫と結婚、一度は芸能界を引退したが、長男を出産後に復帰。関西を拠点に活動しつつ「紅白歌合戦」紅組司会や「M-1グランプリ」審査員なども務めた。

週刊新潮 2023年5月4・11日号掲載

特集「『別居』『再婚』『老いらくの恋』 “夫婦の形”いろいろ」より

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