NHK「のど自慢」はなぜ生バンドからカラオケになったのか チーフプロデューサーが苦渋の決断を語る

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 4月から「NHKのど自慢」(NHK総合・ラジオ第1)がリニューアルされ、生バンドによる伴奏がカラオケ音源に変更されたことに批判の声が上がっている。いわゆる“ネット世論”だけでなく全国紙の朝日、毎日、産経の電子版もカラオケ音源の是非を報道、その記事がSNSで拡散された。(全2回の1回目)

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「のど自慢」の放送開始は1946(昭和21)年。驚くべき長寿番組だが、全国紙3紙がカラオケ音源への変更を報じたことからも、番組に対する世間の関心が依然として高いことが浮き彫りになった(註:各紙の見出しは末尾に掲載)。

 ネットメディアの報道は、カラオケ音源への変更を強く批判したものが目立った。例えば、集英社オンラインは4月20日、以下のタイトルの記事を配信した。

▼「NHKのど自慢」に批判続出。21年間、鐘奏者を務めた“鐘のおじさん” 秋山気清さんはカラオケ仕様にリニューアルされた番組を見て何を思う?

 同番組で今年3月まで鐘を叩いていた秋山気清(きせい)氏が取材に応じ、カラオケ音源への変更は《やはり残念です》とした上で、《どのような理由かはわかりませんが、そこ(生バンド演奏)は貫いてほしかった》と惜しむ声を伝えている。

 ならば《どのような理由》でカラオケ音源に変更したのか、そもそもなぜ「のど自慢」はリニューアルする必要があったのか、チーフプロデューサーの中村雅郎氏(53)に訊いた。

「『のど自慢』はNHKのエンターテインメント部門における旗艦番組の一つですから、エンタメ担当なら誰もが一度は関わります。とはいえ、僕は関与の密度が濃いほうです」

改革の必要性

 中村氏は1992年にNHKに入局し、一貫してエンタメ畑を歩んできた。新人ADとして初めて「のど自慢」に参加した時、司会は吉川精一アナウンサー(82)だった。

 丸30年のNHK人生は、東京と福岡の2局を「異動で行ったり来たり」しながら、福岡放送局には合計11年間勤務した。

 福岡局は九州・沖縄地方の拠点局のため、九州各県で年に8回開かれる「のど自慢」には必ずスタッフとして関わった。これに東京での経験も加えると、NHK広しといえど中村氏ほど「のど自慢」に精通した職員はいないという。

「去年の夏に福岡から東京に異動になると、上司から『「のど自慢」のリニューアルを担当してほしい』と異動理由について説明を受けました。収録の現場は何度も経験していたため、私も改革の必要性は痛感していました。何より、新型コロナの影響で2020年3月から何度も放送が中止となり、様々な問題点が浮上していました。昨年の夏頃、ややコロナ禍が沈静化したこともあり、番組スタッフの間でも『このタイミングで一気に懸案事項を解決しましょう』という声が高まったのです」

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