「第二の村上頌樹」を発掘せよ! スカウトが注視する“ストレートが遅くても”プロで飛躍しそうなドラフト候補

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先発タイプとして面白い投手

「いつ見てもピッチングは安定していますし、試合を壊すことがない。大学生の先発投手としての実力は申し分ないと思います。ただ、ストレートのスピードは高校時代と比べてそこまで変わっていない。プロの打者を相手にすると、コントロールミスが単打では済まずにホームランや長打になりそうなタイプに見えます。また、大学と比べるとプロはストライクゾーンも狭くなる。その中で今のスピード、球威で結果を残せるかは疑問もありますね。このあたりを各球団がどう判断するかになると思います」(パ・リーグ球団のスカウト)

 前述した昨年の明治神宮大会の2試合でも、ストレートの最速はそれぞれ141キロ、143キロとなっており、筆者が、今年の春のリーグ戦で確認した最速は144キロにとどまる。球速だけを見れば、ドラフトの上位候補とは言いづらいのが現状だろう。それでも村田を評価する球団が出てくるのではないかと話すスカウトもいる。

「昨年、結果を残したこともあってか、マウンド上で自信を持って投げているように見えるのがいいですよね。変化球も多彩ですし、どのボールでも勝負できる。スピードガンの数字以上にボールを速く見せる技術も持っています。(阪神の)村上にタイプとして、一番近いのは村田かもしれませんね。村上のように、プロに入ってから、ストレートをもう少し速くする必要はありそうですが、先発タイプとして面白い投手だと考えている球団もあるのではないでしょうか」(セ・リーグ球団スカウト)

早稲田大“不動のエース”

 高校時代は全く無名で、大学で大きく成長した投手にも、今回のテーマに当てはまるドラフト候補がいる。早稲田大の加藤孝太郎である。茨城県立下妻一高では目立った実績はない。同大にも、スポーツ推薦ではなく、指定校推薦で進学している。

 同期には、履正社のエースで、2019年の夏の甲子園で優勝を経験した清水大成や、U18侍ジャパンに選ばれた習志野のエース・飯塚脩人らがいる。加藤は、ライバルが多いなかで、着実に力をつけて、昨年春から先発に定着した。

 今では“不動のエース”となっており、今年の春もここまで3勝0敗、防御率1.14と見事な成績を残している。加藤のストレートは140キロ台前半で、スピードがあるわけではない。前出のセ・リーグ球団スカウトは、加藤の持ち味について以下のように話してくれた。

「フォームが少し独特です。右のオーバースローですが、“変則投手”のタイプに入ると思います。打者からすると、ボールが最後まで見えないですし、リズムもゆったりしているのでタイミングが取りづらい。速くなさそうなフォームから、それなりに速いボールが来ると言ったらよいですかね。ボールよりも、フォームで勝負するタイプの投手だと思います」

 ロッテやメジャーリーグなどで活躍した、早稲田大の小宮山悟監督は、加藤が抑えられる理由について「企業秘密です」と話しているが、独特のフォームとリズムが早稲田大のエースとして活躍できる要因であることは明らかだ。

 阪神で驚くべき投球を見せている村上は、智弁学園、東洋大を経て、2020年のドラフト5位で入団しており、プロ入り前の評価は高いとはいえなかった。過去にはドラフト時に評価が高くない選手がプロ入り後に一軍で活躍すると、翌年のドラフト会議で同様のタイプの選手が上位で指名されるケースがあった。「第二の村上」を発掘できるか、今秋のドラフト会議までスカウト陣の情報戦は激しさを増しそうだ。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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