衝撃の前田敦子ネタから11年…キンタロー。のものまねが面白いのはなぜか

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ものまねは一種の「批評」である

 さらに言えば、彼女の人気の背景には、世間の人がAKB48に対して漠然と抱いている「違和感」のようなものがあった。AKB48は当時たしかにすさまじく人気があったのだが、支持している人は必ずしも多数派ではなかった。

 世の中の大半の人は、AKB48にそこまで興味がない。そんな一般の人たちは、AKB48のメンバーがかもし出す独特の雰囲気や、彼女たちのファンの異常なまでの情熱といったものに、何かしらの違和感を抱いていることが多かった。

 ただ、だからといって、表向きにAKB48を直接批判するのは心理的にも抵抗がある。そんなときに現れたのがキンタロー。だった。キンタロー。は、AKB48メンバーの一挙手一投足をデフォルメしたものまねを演じていた。そんな彼女のネタを見て、人々は笑いながら、AKB48への違和感を代弁してもらったように感じて、すっきりした気分になっていたのではないか。

 ものまねという芸を楽しむ人の心理には、多かれ少なかれこういう部分があるような気がする。いわば、ものまねは一種の「批評」であるからこそ面白いのだ。

 その後も彼女はものまねのレパートリーを増やし続けているし、バラエティ番組の企画で社交ダンスに挑戦したことでも話題になった。テレビで前田敦子との共演も果たしている。

「前田敦子のものまね」という歴史に残る傑作を持っている彼女だが、決してそこにとどまらず、常に同じぐらいの破壊力を持つネタを量産している。「ものまね」と「ダンス」という2つの分野で絶対的な才能を誇る彼女は、今後も活躍を続けていくだろう。

ラリー遠田
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)など著書多数。

デイリー新潮編集部

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