Z世代にハマるロッテ「吉井監督」の“見守り戦術” 混戦パ・リーグを制する可能性も出てきた

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試合前の全体練習をナシ

 千葉ロッテマリーンズが日本一に輝いた2005年の再現も夢ではなさそうだ。吉井理人監督(58)の「体力温存」策が、混戦パ・リーグを制するかもしれない――。

 5月10日、ベルーナドームでの埼玉西武戦に千葉ロッテが勝利した。この日の先発は、開幕投手を務めた小島和哉(26)。新たに習得したフォークボールが効果的に決まり、今季3勝目を挙げた。

「小島は昨季、防御率3.14でしたが、味方打線の援護に恵まれず、3勝11敗に終わりました。今季6試合目の登板で去年の勝ち星に並ぶことに。チームも去年の8月24日から水曜日は負けていません。投打とも中心的選手を欠く状態ですが、確実に勝利を積み上げている感じです」(スポーツ紙記者)

 その要因はどこにあるのかと探ってみたのだが、千葉ロッテは4月21日の福岡ソフトバンク戦以降、試合前の全体練習をなくしている。厳密に言えば、昨季も連戦中にシートノックなど、一部の練習メニューをカットする日はあった。しかし、吉井監督は「体力温存です!」と言って、各自が必要だと思うメニューを消化する「自主練習スタイル」に移行したのである。

「打撃なんか、みんなで練習する必要がない。みんなでやらなくちゃ、となってしまい、試合の準備になっていない」

 メジャーリーグを経験した吉井監督らしい発想だが、チーム生え抜きの福浦和也ヘッド兼打撃コーチ(47)はこんなことも話していた。

「ボビー(バレンタイン監督)のときもバッティング練習ナシってけっこうあったかな。選手が自分たちで考えながらやれるから、いいんじゃないですか」

 バレンタイン監督が指揮を執った05年はリーグ優勝、日本一に輝いた。吉井監督はその時代のロッテを知らないが、「選手が自分たちで考えて」「体力温存で無理をさせない」の発想は同じだ。

絶対に無理をさせない

「自主練になった経緯をもう少し説明すると、変更前日の4月20日は北海道北広島市・エスコンフィールドでのナイトゲームがあり、21日は本拠地ZOZOマリンに移動して、そのままナイトゲームを行うスケジュールでした。全体練習を取りやめた効果かどうか、ソフトバンクには3連勝しました。何より、選手たちも『このほうがやりやすい』と言っていますので」(チーム関係者)

 移動時間の長いメジャーリーグでは、球場に到着してキャッチボールだけで試合に臨むことも珍しくない。マジメな日本人の発想からすれば、「全体練習ナシ」は後ろめたい気にもさせられるが、チームは好調さを維持している。藤原恭大(23)、平沢大河(25)、佐藤都志也(25)、安田尚憲(24)といった若手も成長し、結果を出し続けている。

 また、投打のチーム成績だが、チーム防御率2.80はリーグトップ。チーム打率は2割2分6厘(4位)と、高くないが、自主練スタイルになる前の4月20日時点では2割0分5厘だった。

 Z世代とも呼ばれる今の若い選手たちには、「好きなようにやってみろ」と干渉しないやり方のほうが合っているのかもしれない。

「好調な滑り出しができたのは、佐々木朗希(21)の好投も大きい。すでにリーグ最多の50奪三振をカウントしており、防御率0.84もリーグトップです」(前出・スポーツ紙記者)

 その佐々木だが、5月5日のソフトバンク戦に先発し、5回まで“ノーヒットノーラン”だった。しかし、右手中指にマメができてしまい、その報告を受けた吉井監督は迷わずに「交代」を告げた。

「すでにキャッチボールを再開させているので、軽症だったはず。でも、去年はマメができていたのに投げさせた影響で、のちに1ヶ月もチームを離脱することになってしまいました。絶対に無理をさせない、というのが吉井イズムです」(前出・同)

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