「カミラ王妃」誕生に影を落とす「ダイアナ人気」 露骨なイメージアップ戦略に英国人が抱く“複雑な感情”
「クイーン・コンソート」から「クイーン」に
チャールズ国王の戴冠式と関連行事、祝日を終え、5月9日から日常に戻った英国。世界が注目した歴史的大イベントだけに、SNSも多数の関連投稿でにぎわった。だが、中には「私にとってのクイーンは彼女」と、見覚えがある女性の写真を添えた投稿もある。その女性とは、チャールズ国王の元妻であり、日本でも絶大な人気を誇ったダイアナ妃だ。
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チャールズ国王が即位したのは、エリザベス女王が死去した日である。このとき、カミラ王妃の称号は「クイーン・コンソート(王の伴侶)」となった。以前は、前例はないがさらに一歩引いたニュアンスがある「プリンセス・コンソート」を使うとした時期もある。しかし、2022年にエリザベス女王が「(カミラ王妃が「クイーン・コンソート」の称号を得るのは)心からの願い」と語ったことで、最終的には“既定路線”になっていた。
そして今回の戴冠式では「クイーン」の称号が使われた。日本語ではどちらも「王妃」と訳されるものの、「クイーン」は明らかな“格上げ”だ。4月に公開された戴冠式の招待状でこの事実が判明した際は、英国内で大きなニュースになった。このとき王室関係者はメディアに対し、エリザベス女王と区別するために「クイーン・コンソート」を使っていたなどと証言している。
以前のカミラ王妃が意図的に使わなかった称号は、皇太子妃の「プリンセス・オブ・ウェールズ」である。その理由は、先にこの称号で知られたダイアナ妃、および彼女のファンに対する配慮とされた。長年のダブル不倫を経てチャールズ国王と再婚した2005年、「カミラ夫人」に対するバッシングは当然ながら激しかったからだ。
一方でダイアナ妃は、夫の不倫によって精神的に追い詰められ、果ては1997年の事故死という悲劇的な結末を迎えた。それから26年、一連の経緯を“自国の出来事”として目の当たりにしていた英国民は、いったいどのような感情を抱いているのだろう。
カミラ王妃のPRキャンペーンとは
英紙「デイリー・メール」は戴冠式の数日前、ダイアナ妃に長く仕えた元個人秘書の寄稿文を掲載した。離婚交渉中の舞台裏に関する生臭い箇所もあるが、今回の戴冠式を直接批判する内容ではない。「勝利の色を帯びたこの(戴冠式の)喜びは、忠実な君主主義者の多くにまだ少しの不安を感じさせるかもしれない」といった表現で、英国民が抱く“微妙なモヤモヤ感”を代弁するものだ。
コメント欄には「彼女が安らかに眠れるように祈る」など、ダイアナ妃を悼む声が寄せられた。一方で「私の君主としてチャールズ国王を受け入れるが、彼の妻がそこに加わることは決して認めない」「カミラを受け入れるように働きかけるPRキャンペーンは、私には効果がなかった」という声もある。
この「カミラ王妃のPRキャンペーン」とは、いったいどういうものなのか。元BBCの王室担当記者ピーター・ハント氏は英誌「スペクテイター」で、「カミラは利口だった。メディアと近い距離を保ち、『デイリー・メール』ですら近くに置いた」と綴っている。
「デイリー・メール」は保守・親王室派メディアで、“王室離脱”で物議を醸したヘンリー王子夫妻と法廷で争うこともある。前述したダイアナ妃の元個人秘書の寄稿文も同紙の掲載だが、確かに存在する“微妙なモヤモヤ感”には触れておくべきだという判断があったのかもしれない。加えて、ダイアナ妃がそれほどまでに英国民から愛されている証左でもある。
いまもダイアナ妃を忘れられない英国民。そこに向けた「カミラ王妃のPRキャンペーン」は、メディアの力を借りたものだ。実際、カミラ王妃関連の報道にはここ数年、明らかに特徴的な部分がある。
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