相席スタート山添、オードリー春日…なぜワイドショーで芸人は失敗する? サービス精神が時代に逆行

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嫌よ嫌よは「前フリ」のうち? コンプラ時代と逆行する吉本芸人的サービス精神

 コンプライアンス意識が問われている、といえばそれまでだが、ワイドショーでの演出に、今までのお笑いのフォーマットが通用しなくなってきているのではないだろうか。いわゆるダチョウ俱楽部の「押すなよ」フォーマットである。

 春日さんの時は、実は「池に落ちんなよ」という加藤さんの発言を2回無視している。しかしそれでも落ちないため「足元気を付けろ」「気を付けろ」とダメ押しして、ようやく3回目に春日さんが池に突っ込んだ。ペンギンの餌やりの映像などどうでもよくて、春日さんが落ちない限り、加藤さんは言い続けただろうと思わせる空気だった。

「ラヴィット!」でも同様の印象を受ける。3時のヒロイン・福田さんにだけ「違う味が入ってる」「他の味をサービスされている」と繰り返す山添さんは、「前フリ」のつもりだったのではないか。それを受けて福田さんが「自分が店主のタイプなのだろう」とこれまた古いお笑いの形で返したが、店主も気を使って「ベリーキュート」と返したためあまり笑いが起きなかった。ここで「イヤイヤまさか」と否定してくれれば古いなりに笑いが成立したのだろうが、山添さん的には食い足りなかったのだろう。というか、制作側も盛り上がりに欠けると踏んだのではなかろうか。そこで山添さんが暴挙に出て、今度こそ福田さんや若槻千夏さんが「ダメダメ」と大げさに騒ぐことで撮れ高ができたという流れに見えた。

 芸人たるもの、いついかなる時もカメラを向けられたらボケるべし。山添さんは現吉本、加藤さんは元吉本だが、特に吉本芸人はそういう教育が染みついているだろう。よく明石家さんまさんがトークバラエティーで、芸人でもないタレントや素人に「そこはボケるとこやろ」といった「教育的指導」をすることがあるが、あれはとても吉本的な価値観だと思う。気が進まない素振りや尻込みする姿を見せるのはご法度であり、使うなら次の爆笑につなげる「前フリ」としてのみ。笑わせてなんぼ、というサービス精神はワイドショーに親しみやすさをもたらすものの、コンプライアンス時代とは相性が悪い。「やめて」は文字通り「やめて」であると、それこそ性犯罪や教育問題を扱うワイドショーでは取り上げることも増えてきたはずだ。

 また芸人だけならいいが、今回は二件ともロケ先での出来事だった。どちらも行動そのものだけでなく、身内の価値観をよそで強引に押し通したこと、それを止めない制作陣側への抵抗感が視聴者には大きかったと思われる。

新井恵理那の結婚報告騒ぎも……制作陣の意識のズレに見るワイドショー苦境の時代

 ワイドショー制作陣のおかしな距離感に、振り回されているのは芸人だけではない。先日はテレビ朝日の「グッド!モーニング」で、フリーアナの新井恵理那さんの妊娠と結婚発表のバカ騒ぎぶりにも批判が集まった。

 これもまた、「俺たちの大好きな新井さん、あなたもお好きですよね。みんなで盛り上がりましょうよ!」みたいな身内ノリに新井さんも視聴者も巻き込まれたケースだろう。同時期に結婚発表した水卜アナの二匹目のどじょうを狙ったのではといわれているものの、ふたを開けてみれば「うざい」の大合唱。批判の目は新井さんに集中し、SNSのコメント欄を閉鎖するほど傷ついていると報道されていた。

 貪欲に笑いを取りにいく芸人と、はしゃぐ女子アナ。朝は明るく楽しくというワイドショーの鉄則からすると当然のキャスティングも、使い方まで考えないと厳しい結果が待っている。テレビ全盛期には考えられなかったことだが、画面の中のことを特別視してありがたがる視聴者も減ってきた。岐路に立たされているワイドショー制作だが、現場がまず取り組むべきは謝罪の仕方の検討より、視聴者からの「やめて」はお笑い業界の「押すなよ」ではないという意識変革かもしれない。

冨士海ネコ

デイリー新潮編集部

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