満身創痍のタイガー・ウッズ 長年の相棒キャディとの別れ、元恋人による3000万ドル訴訟の真相

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恋人との破局

 相棒キャディのラカバよりも先に、ウッズの傍らから消えた人物がいる。彼の恋人だったエリカ・ハーマンのことだが、彼女いわく、ウッズの下から去ったのではなく、「騙されて追い出された」のだという。そして彼女は、ウッズをセクハラ等で提訴し、3000万ドルの賠償金を要求している。

 ウッズとハーマンが交際を始めたのは2017年8月。ハーマンはウッズがフロリダ州ジュピターの自宅近くに創設したレストランの従業員だったが、ウッズは彼女をマネージャーに抜擢し、自宅に同居させるようになった。

 ウッズの豪邸にはウッズの長女と長男も居住していたが、子どもたちもハーマンによくなついている様子だった。4人が家族としてともに行動する場面は、試合会場でも、プライベートでも、頻繁に見られていた。

 だが、2022年10月13日、ウッズはハーマンとの関係に終止符を打ち、ハーマンに自宅からの退去を求めたという。しかしハーマンによれば、いきなり一方的にウッズの自宅から追い出されたとのこと。

 それから13日後、ハーマンはフロリダ州の裁判所に訴状を提出。口約束を破っていきなり家から追い出されたことやセクハラを受けたことに対する賠償を求めるとともに、セクハラの内容を具体的に明かしていくためにNDA(秘密保持契約)の無効を求めた。

 するとウッズ側がすぐさま反訴。「そもそもハーマンにはウッズ家に居住する権利はない」として、ハーマンが住居から追い出されたことによるダメージ(賠償)を求めることに意味はないと主張した。

 しかしハーマンは、ウッズ家にさまざまな「サービス」を提供する代わりに、ウッズの自宅に無料で居住し、生活を保証される口約束をウッズと交わし、その約束は「あと5年残っている」と反論した。

突然追い出された

 そしてこの5月、ハーマン側が裁判所に提出した新たな書類の一部が米メディアによって明かされた。ハーマンは「バハマへ短期の旅行に行くから支度を!」と言われ、身の回りのものだけをスーツケースに詰めて空港へ到着すると、ウッズの弁護人に電話をするよう言われたそうだ。

 弁護人からは「もうあなたは、ウッズ家には戻らないし、戻れない。二度とウッズに会うことはない」と言い渡された。そして、親しくしてきたウッズの子どもたちにも、自身のペットにも会えなくなり、衣服など持ち物も置き去りになってしまったことが書類に記されていたという。

 ウッズと出会った際はレストランの従業員だったハーマンが、「雇用主であるウッズから性的関係を迫られ、関係を持ったことを理由にNDAにサインをさせられたことは、セクハラに値する」というのがハーマン側の主張だ。しかし、賠償金3000万ドルの妥当性は果たしてあるのかどうか。

 米メディアの中には「セクハラをしている雇用主とわざわざ一緒に暮らしたがる人はいるのだろうか?」と、ハーマンの言動に首を傾げる記事も見られる。5月9日(米国時間)の第1回審問には、右足の手術後のウッズもハーマンも姿を現わさず、どちらも代理人(弁護人)のみが出廷したが、双方の主張はまったくの平行線で、混沌とした状況のまま終了したという。

 裁判の今後の成り行きは気になるものの、ゴルフ界のレジェンドの像が崩れ落ちるような結末だけは見たくない。

王者ウッズは永遠の王者であってほしいし、永遠の王者に値する言動であってほしいと願うばかりだ。

舩越園子(ふなこし・そのこ)
ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。早稲田大学政治経済学部経済学科卒。1993年に渡米し、在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。『王者たちの素顔』(実業之日本社)、『ゴルフの森』(楓書店)、『才能は有限努力は無限 松山英樹の朴訥力』(東邦出版)など著書訳書多数。1995年以来のタイガー・ウッズ取材の集大成となる最新刊『TIGER WORDS タイガー・ウッズ 復活の言霊』(徳間書店)が好評発売中。

デイリー新潮編集部

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