中村剛也、特例で「名球会」入りのハードルが高いワケ ネックは“打高投低”と“もう一人のアーチスト”

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打者が供給過多の名球会

 NPBは長く130試合制だったが、現在は143試合制。今後も資格条件を満たす選手は、投手より打者の方が多く見込まれる。1921安打の大島洋平(中日)、1923安打の中島宏之(巨人)、1721安打の浅村栄斗(楽天)ら候補者がずらりと控えている。

 一方、投手は日米通算192勝の田中将大(楽天)、同190勝のダルビッシュ有(パドレス)が大台に近づいているものの、後続はNPB183勝の石川雅規(ヤクルト)、日米156勝の前田健太(ツインズ)ぐらいで、この2人にしても年齢などを踏まえると、到達は容易ではない。

「打者の名球会入りは絶えることはないだろう。ただ、投手の方は分業制が導入されて久しく、先発は球数制限が厳密になり、勝ち星が付きづらくなってもいる。しかも、投手の勝ち星に対する意識は昔に比べ、希薄になった。試合を組み立てる力があれば過度に勝利数に左右されることなく、メジャーでは適正な評価を受け、巨額の契約が結べることも背景にある。投手が名球会よりメジャーを目指す現状では、特に200勝が出てきづらくなるのではないか」(前出の元監督)

 中村が既にクリアしている450本塁打の達成者は過去14人しかおらず、日米通算を含まなくても54人いる2000安打より大幅に少ない。しかし、名球会員の「打高投低」の傾向が続く限り、中村への特例適用は投手に比べると、厳しくならざるを得ないようだ。

おかわり君の“タブチ君”超えは最低条件?

 もう一つのハードルは、名球会には入っていない元打者では最多の474本塁打を放った田淵幸一氏(元阪神など)の存在である。元祖「アーチスト」で、通算1532安打と中村より大幅に少ない安打数ながら、驚異的なペースで本塁打を量産した。

「474本以下で中村の特例を認めれば、田淵さんを名球会に入れないと矛盾が生じる。ただ、今になって田淵さんを会員にするのも違和感がある。過去に遡って解釈を新たにすることに(執行部は)抵抗があるのではないか。田淵さんまで入れれば、会の権威という意味ではマイナスに働くのは間違いない」

 元監督はそう指摘した上で、中村の特例適用の条件として議論の俎上に乗るのが田淵氏の474本塁打超えで、当確は500本塁打だという。

「中村は田淵さんの本塁打数を射程に捉えている。中村自身も500本に強烈なこだわりを持っている。500本には今季から毎年15本塁打すれば、ほぼ3年で届く計算になる。今の状態を見ると、不可能な数字ではない。

 過去、大阪桐蔭高出身で名球会入りした選手は皆無だ。高校球界では一世を風靡したPL学園高の後に、プロに多くの有力選手を輩出するようになった同校にとってのメルクマールにもなる。西武関係者は「中村のようなホームランか三振かという、分かりやすいスタイルは日本では珍しい。アマチュアからこういうタイプの打者を育てていくためにも中村の名球会入りで道筋を作ることは大事なこと。500本はとてつもない数字だから、達成すれば文句なしで特例を認めてほしい」とその意義を強調している。(記録は5月8日現在)

デイリー新潮編集部

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