アカデミー賞6部門ノミネート 話題の映画「TAR/ター」を完全制覇するための5つのポイント
追加試写会が組まれるほどの人気
5月12日公開の映画「TAR/ター」(トッド・フィールド監督)が話題になっている。試写会は連日満席で、追加試写が組まれるほどの人気だった。
【写真を見る】“ベルリン・フィル初の女性常任指揮者”リディア・ター(ケイト・ブランシェット)
「受賞こそ逃しましたが、米アカデミー賞に6部門でノミネートされ、特に主演女優賞候補だったケイト・ブランシェットの怪演が見ものです。しかもこの映画、クラシック音楽界が舞台なのですが、かなり本格的な描かれ方なのです。もちろん予備知識なしで観ても十分面白いのですが、知っておくとさらに楽しめるシーンがかなりあるようなんです」(映画ジャーナリスト)
そこで、大の映画好きでもある、音楽ライターの富樫鉄火氏に、いちはやく試写会で観てもらった。
「私も音楽映画はずいぶん観てきましたが、ここまでリアルな作品は初めてで、いささか興奮気味です」
というわけで、さっそく解説してもらおう。
「アカデミー女優、ケイト・ブランシェット扮するリディア・ターが、ベルリン・フィル初の女性首席指揮者だとの設定です。一緒に暮らすパートナーは、ベルリン・フィルの女性コンサート・マスター。移民の女子を養子に迎え、自らを“パパ”と称しています」
あらゆる栄誉を手に入れて独走する彼女が、ある出来事に翻弄され、次第に追い詰められていく。そこが見どころだ。だが、現実のベルリン・フィルに女性首席指揮者はいない。つまりこの映画は“架空”の物語なのだ。
「ところが、様々な周辺設定が実名で登場するばかりか、そのほかも多くが実話をもとにしているのです。そもそもター自身がバーンスタインの弟子だとの設定で、本人のレコードやビデオ映像なども出てくる。よって観ているうちに架空の物語だとは思えなくなり、背筋が寒くなってくる仕掛けです。だからこそ、その“実話”部分をすこしでも知っておくと、より楽しめるというわけです」
それには、5つのポイントがあるという。
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