迷いクジラ「淀ちゃん」処理までの10日間に起きた“奇跡”とは? 海遊館、大阪市の担当者が明かす
「一番の奇跡」
いよいよ海洋投棄が行われる前日の1月18日、国立科学博物館と海遊館による学術調査が実施された。
海遊館の担当者によれば、
「とにかく巨大で、科博さん主導による作業時間の予定は3時間以内でしたが、開腹してガスを抜き、内臓などを調べて再び腹を閉じるのはタイトだと感じました。最初は8メートル前後と聞いていたのに計測したら15メートル近くあって驚いた。引き揚げで万が一にも淀ちゃんがズリ落ちたり、クレーンが倒れたりしたら大惨事なので緊張しましたよ。表面はゴム長靴を触った時のようなキュッキュッといった感触で、思ったより腐敗は進んでいませんでしたね」
調べると、淀ちゃんはオスの個体で、人間なら働き盛りの40~50代にあたる年齢だったが、外傷はなく死因は不明だったそうだ。
「今回の作業の中で一番の奇跡はクレーンで無事に引き揚げができたこと。淀ちゃんがうまく載るように、海遊館を始め学術機関の方々には重心位置を計算するなどアドバイスを頂きました。クレーンの耐荷重がギリギリの中、吊り上げ角度やワイヤーの取り付けを調整して乗り切れました。産官学、皆さんの力を合わせて、なんとか海洋投棄するための船に載せることができたのです」(杉ノ内氏)
まさに“オール大阪”の力を結集して紀伊水道沖へと運ばれた淀ちゃんの死骸は、魚やプランクトンの餌となり豊かな海を形成する一助になるという。
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