迷いクジラ「淀ちゃん」処理までの10日間に起きた“奇跡”とは? 海遊館、大阪市の担当者が明かす

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 大阪発祥とされる鯨肉のハリハリ鍋。関西ではおなじみでも、いざ実物が現れたら大騒ぎ。その後始末にはさまざまな困難が……。

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 突如、大阪湾の淀川河口付近に迷い込んだ鯨が「淀ちゃん」と呼ばれ親しまれたのは記憶に新しいが、次第に衰弱して、発見から4日後の1月13日に死んでいるのが確認された。

 そこで持ち上がったのが、巨大な屍と化した鯨をどう葬るかという難題だった。河口から流された死骸は河川敷近くに漂着してしまい、異臭を訴える電話が役所に入り始めた。

「“腐敗が進みガスがたまり始めている。処理を急がねば”と、リミットが近づいていることを感じました」

 そう振り返るのは、大阪市大阪港湾局海務課の杉ノ内順子課長代理である。

「淀ちゃんの死が確認された日から1週間ほどは早朝から深夜まで対応業務が続きました。処理方法の検討や実際に作業を進めながら、関係各所との連絡調整や、問い合わせ対応などで一日中てんてこまい。出勤してペットボトルのふたを取ったところで電話がかかってきて、そのまま業務が続き、夜まで一滴も飲めなかったこともありました」

各方面に打診したが…

 水産庁のマニュアルによれば、処理方法は(1)埋める(2)焼く(3)海洋投棄の三つ。大阪港は工業地帯で(1)と(2)のための用地は確保できず、選択肢は(3)のみだった。

 では具体的にどう行うか。市は各方面に打診したが、前例がなく断られることの連続だったとか。

 再び杉ノ内氏に聞くと、

「“約40トンの鯨が処理作業の負荷に耐えられるか”を常に意識しつつ検討を進めましたが、専用の機材もなく何度も変更を繰り返しました。そんな中、天保山にある海遊館の館長さんが“皆で知恵を絞ってできる方法を考えよう”と、実際にクレーンでの引き揚げを行った事業者さんを紹介してくださるなど、本当にお世話になりました」

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