阪神・村上頌樹が「佐々木朗希」を上回る驚くべき指標 140キロ台のストレートで“無双状態”
ドラフト5位指名から一気に覚醒
今年のセ・リーグで驚きの活躍を見せている投手といえば、阪神の村上頌樹だろう。開幕から4試合に登板して25回連続無失点と圧巻の投球を続けているのだ(5月7日終了時点)。今シーズン初先発となった4月12日の巨人戦では7回まで1人の走者も許さないパーフェクトピッチングのまま降板したことでも大きな話題となった。【西尾典文/野球ライター】
さらに驚かされるのが投球内容だ。25回を投げて許したヒットはわずかに5本、与えた四球も1とピンチらしいピンチすら招いていない。1イニング当たりの被安打と与四球を足して表すWHIP(Walks plus Hits per Inning Pitched)という指標があり、先発投手では「1.00」を切れば超一流と言われているが、村上はここまで「0.24」となっている。パ・リーグで圧倒的な成績を残している佐々木朗希(ロッテ)のWHIPが「0.56」ということを考えても、この数字がいかに異次元だということがよく分かるだろう。
村上は智弁学園時代の3年春に選抜高校野球で優勝投手となり、東洋大でも3年春には6勝0敗の好成績でリーグ戦のMVPを受賞するなど、アマチュア時代から活躍してきた選手であるが、2020年のドラフトでは5位指名と、低い順位でのプロ入りとなっている。
最終学年に怪我でほとんど投げられなかったため、低い順位となった。それ以上にスカウト陣の評価が上がらなかった理由は、村上のスピード不足と体格が考えられる。
大学時代の自己最速は149キロと言われていたが、試合で140キロ台後半をマークするボールは少なく、大半が140キロ台前半だった。また、大学時代に登録されていた身長は174cm(現在は175cm)と投手としては小柄で、ここから大きくスケールアップすると考えていたスカウトは少なかったようだ。
コントロールの緻密さは12球団トップクラス
そんな村上が、プロの強打者を相手にここまでの成績を残している要因として挙げられるのが緻密なコントロールである。過去2年間の二軍での成績を見ても1試合あたりの与四球率は2点台前半と高水準だったが、今年は前述した通り25回を投げて与四球わずかに1とさらに改善している(5月7日終了時点)。
ただ、四球が少ないだけではなく、村上のボールを捕球した捕手のミットがほとんど動かないケースも多く、コントロールの緻密さは既に12球団全体でトップクラスと言えるだろう。
なぜ、村上はここまで高い制球力を維持することができているのだろうか。野球の動作解析の第一人者で、筑波大野球部の監督を務める川村卓准教授にその理由を聞くと、以下のような答えが返ってきた。
「まずコントロールの良い投手の特徴として、腕全体が肩よりもしっかり前に出てきてリリースしているという傾向があります。速いボールを投げようとすると肩を内旋する動作が大きくなるのですが、そうなると、肘だけが前に出てそれより先の前腕や手首が出ずに上手くコントロールできないというケースが多いです。村上投手は肩甲骨周りが安定していて、しっかり腕全体が前に出てきているように見えますね。あとは踏み出した左足を上手く固定できている。このあたりにコントロールの良さの秘訣があるように思います。スピード全盛の時代で、球速やボールの回転数などを上げることに注目が集まりますが、しっかりボールをコントロールできる投手はやはり貴重です。これは監督という立場でも常々思いますね」
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