【叡王戦第3局】菅井八段に逆転勝ちで藤井六冠が防衛に王手 「千日手」の回避で明暗

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すさまじいタイトル戦のスケジュール

 叡王戦の第4局は5月28日に岩手県宮古市で開催される。「振り飛車ファン」の期待を一身に背負っている菅井は「しばらく間があるのでしっかりと準備したい」と話していた。ひょっとしたら中飛車(飛車を5筋に振る)で挑むかもしれない。

 ところが、藤井には準備の間もない。5月13~14日には名人戦の第3局、21~22日には第4局が控える。こちらは挑戦者として渡辺明名人(39)に挑み、「最年少名人」になるべく奮戦しなくてはならない。しかも藤井は、ゴールデンウイークに突入した4月27~28日に名人戦の第2局に勝利している。4週連続でタイトル戦を戦うことになるのだ。

 叡王戦はタイトル戦の中では最短4時間の持ち時間で1日制、名人戦は最長9時間の2日制。そのうえ渡辺と菅井はタイプがまったく違う。

 短期間にこれだけ要素の異なる将棋を指しながら勝利して行くのは並大抵のことではない。6年前に叡王戦がタイトル戦に昇格したためでもあるが、七冠に輝いていた頃の羽生善治九段(52)でも、ここまでの立て混み方はなかったのではないか。若いとはいえ、藤井が不摂生で体調を悪くしたりせず、健康管理していることも立派である。

 驚くことがまだある。藤井は2020年夏の棋聖戦でタイトル戦に初登場して以来、タイトル戦の通算対局数は叡王戦第3局で62戦目だったが、まだ一度も連敗していない。

 これは凄いことである。物腰は柔らかいが、一度負けた相手に対して「今度は許さんぞ」という秘めたる闘争心の為せる業だろう。
(一部、敬称略)

粟野仁雄(あわの・まさお)
ジャーナリスト。1956年、兵庫県生まれ。大阪大学文学部を卒業。2001年まで共同通信記者。著書に「サハリンに残されて」(三一書房)、「警察の犯罪――鹿児島県警・志布志事件」(ワック)、「検察に、殺される」(ベスト新書)、「ルポ 原発難民」(潮出版社)、「アスベスト禍」(集英社新書)など。

デイリー新潮編集部

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