【袴田事件再審】ボクシング仲間が証言する“20歳の巖さん”「根性があって打たれ強かった」

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巖さんが出廷する可能性は?

 この日、浜松市の自宅に残った巖さんは、日常生活を支援する「見守り隊」(猪野待子隊長)のメンバーによるドライブを楽しんだという。

 拘禁反応の影響が色濃い巖さんが、再審で法廷に姿を見せる可能性について、小川弁護士は「巖さんは再審裁判の意味が分からず、被告として防御ができず、訴訟能力がないため、出廷免除を求めている」とした。これについての可否は三者協議の終盤で決まるというが、巖さんが出廷する可能性は低いだろう。

 静岡地裁の建物は最近新築された。しかし、「袴田巖さんを救援する清水・静岡市民の会(市民の会)」の楳田民夫代表は、「死刑判決を下された時のことを思い起させるので、法廷に入れば恐怖感が蘇ってしまい、精神状態がもっと悪化する可能性がある。出廷はまず無理」と話す。

迅速審理へ申し入れ書

 裁判所は弁護団に証拠の選別・精査を求めたが「相当の作業量がある」(間光洋弁護士)という。小川弁護士は「裁判所が今更そんなことを求めてくるのはおかしい。何らかの抗議をしたい」と話していた。

 再審で「捜査側の証拠捏造」が炙り出されるかが焦点だ。市民の会の山崎俊樹さん(69)は「早く無罪判決にしてほしいが、拙速で捏造がうやむやになるべきではない。吉村検察官など存命の人もいる。証人に呼ぶなど検証はできるはず」と話す。

 弁護団は4月20日、東京高等検察庁と最高検察庁に「袴田さんは高齢で1日も無駄にはできない」などとして申し入れ書を提出、有罪の立証をしない方針を直ちに明らかにして迅速な審理に協力するよう求めた。

 会見した弁護団の笹森学弁護士(札幌弁護士会)は、「これまでに再審で無罪となった重大事件の被告と比べても、袴田さんは極めて高齢だ。検察は有罪立証するべきではない」と話した。19日には日本弁護士連合会(小林元治会長)が「実質的な審理は、再審請求手続の段階で既に尽くされているというべきであって、もはや新たな有罪立証を行うことは許されない」との会長声明を公表した。

 次回の協議は5月29日だ。これまでの三者協議は東京高裁で行われていたが、今回は静岡地裁だ。高齢のひで子さんの「裁判所通い」も少しは楽になるだろう。

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