豊島“新区長”の誕生でヨドバシ問題はどうなる? 前区長がこだわった池袋LRT構想とは

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 統一地方選の後半戦が4月23日に投開票され、東京都豊島区では高際みゆき候補が当選。24年ぶりに新区長が誕生した。

 前任の高野之夫区長は1999年に豊島区長に就任。以降、24年6期にわたり豊島区政を担ってきた。在任時、高野前区長が取り組んでいた政策は多岐にわたるが、そのなかでも力を入れてきたのが池袋を核としたまちづくりだった。

 池袋駅は大雑把に分けて、東口・北口・西口の3つの文化が混在している。同じ池袋でも各出口で街の風景は大きく異なるが、東口は西武百貨店が街の顔として鎮座。

 西武百貨店は2004年に経営がセブン&アイグループのそごう・西武に替わったが、引き続き東口を牽引する存在だった。

 2022年、その雲行きが怪しくなる。そごう・西武の株式をアメリカの投資ファンドフォートレス・インベストメント・グループとヨドバシカメラホールディングス連合が取得。その影響から西武からブランド品店が撤退し、空いたフロアにヨドバシカメラが出店するのではないか?という憶測が流れたからだ。

 高野前区長は昨年12月14日に記者会見を開き、池袋駅東口に立地する西武池袋本店の低層階にヨドバシカメラが出店することに反対を表明。そして、西武鉄道の後藤高志社長に反対の意を伝える嘆願書を提出したことも明らかにした。

 高野前区長は「西武池袋本店は池袋の象徴であり、その前は多くの人が行き交う。低層階は不特定多数の人が目にするから、街のイメージにも直結する。西武に入居するブランド店がヨドバシカメラに替わってしまったら、池袋の街全体にもさまざまな影響が出る」と訴えた。

 すでに西武鉄道と西武池袋は別会社になっており、高野前区長が嘆願書を西武鉄道に提出しても意味がないとの指摘もあったが、いまだ西武鉄道は西武池袋本店の土地・建物の所有権を一部ながら持っている。それを踏まえれば、西武鉄道社長に嘆願書を出すことは決して無意味ではない。

 しかし、いくら地元の豊島区でも、民間企業の健全な経済活動に対して強制することはできない。高野区長が提出した嘆願書は、あくまでも地元自治体からのお願いに過ぎなかった。

「なぜ、ビックやヤマダはいいのに、ヨドバシはダメなのか」

 豊島区が直面する問題に対してどう考えているのか? 筆者は、新区長の考えを聞いておきたかった。そのため、選挙戦最終日に池袋駅西口で実施された街頭演説に足を運び、カコミ取材で高際候補に西武池袋のヨドバシ問題をどうするのか?について直撃している。

 高際候補は「副区長のときは直接の所管ではなかったので」と前置きしながらも「(フォートレス&ヨドバシ側にも意思を確認したが)出馬を決める3月20日まで、先方から何も示されていない。そのため、現在は対応の取りようがない」と玉虫色の回答をしている。

 最終日のカコミ取材とはいえ、この時点で選挙戦は終わっていない。不用意な発言をしてしまうと、足元を掬われかねない。選挙を戦う候補者が、センシティブな問題に対して明白な回答を避けることは選挙を勝つ常套手段でもある。それだけに、高際候補の玉虫色の回答を非難するつもりはない。

 選挙戦を終えた4月25日の新任会見でも、記者からヨドバシ問題について質問が出ている。選挙を終えれば、誰に遠慮することもない。高際新区長は前区長の方針を踏襲するといった趣旨の発言をしている。

 池袋駅東口には西武池袋本店のほかに、ビックカメラ池袋本店やヤマダデンキ日本総本店など、家電量販店の旗艦店ともいえる巨大店舗が櫛比している。それらが並ぶ池袋を見ると、「なぜ、ビックやヤマダはいいのに、ヨドバシはダメなのか?」といった疑問を抱くだろう。

 豊島区とビックカメラは、2022年10月に「豊かなまちづくりのためのパートナーシップ協定」を締結したばかりだ。それをもって「豊島区は商売敵のヨドバシを排除したいのだろう」といった憶測も飛ぶ。

 しかし、豊島区がまちづくりのために協定を結んでいるのはビックカメラだけではない。多くの企業とFFパートナーシップ協定を締結している。
 
 FFパートナーシップ協定とは、「わたしらしく、暮らせるまち。」を基本コンセプトにした政策について協力関係を強くするもので、例えば西武百貨店と東武百貨店といったように池袋駅を挟んでライバル関係の2者どちらとも協定を締結している。ビックカメラのライバルだからヨドバシを排除するという意見は、憶測の域を出ない。

 それでは、なぜ高野前区長はビックやヤマダがOKで、ヨドバシがNGだったのか? その違いは何なのか? それは、高野前区長が就任直後から目指してきた池袋駅東口における「西武百貨店からグリーン大通りにかけての歩けるまちづくり」計画に狂いが生じるからにほかならない。

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