ChatGPTは「率直にスゴいが、世界について何も知ることはできない」 専門家が語る「人間と機械のあるべき関係」

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人間の知能とは別の方向に進化?

 実際に「チャットGPT」を使ってみて、人間のように自然な会話ができる技術については率直にスゴいと感じましたが、重要なのはスムーズに対話が続くからといって、AIが人間と同じ原理で作動しているわけではないことです。

 人間同士の場合、相手がどんな人格や個性を持っているかを探りながら会話をします。相手との間に共通了解を見つけ出し、それを前提に会話を進めることで理解が深まります。

 他方でAIは、そうした人格的配慮を一切しません。あくまで、ある単語の次にどの単語がくるか。その予測に従って文章を作成しているにすぎません。

 それゆえ、今後AIは人間の知能とはまったく別の方向に進化していく可能性が高いと思います。

 人間の求めに応じて、さまざまな情報を加工したり要約したりしながら、われわれが理解できる自然な言語に置き換えてくれるかもしれませんが、結局は現実に存在する世界について何も知ることはできないでしょう。

 人間にとって学習するとは、われわれの体を取り巻く環境について理解を深め、世界に働きかける技術を身に付けることです。ところが、AIにとって、自らの進化を生み出す“学習”は、人間に必要な情報を過不足なく与えるよう、データを処理することでしかない。

機械にはまねできない「神秘の営み」

 たしかにAIは何でも「説明できる」ような顔をして、事実かどうか分からないうそも含めて答えてきます。ただし、それは何かを「知っている」わけではない。読み込んだデータから統計的な処理をもって正しいと思われる答えを紡ぎ出しているだけなのです。

 機械と人間の大きな違いは、その知識に対応する現実についての確固たるイメージを形成し、生活に役立てることができること。それは機械にはまねできない「神秘の営み」なのです。

 そうした人間の能力を軽視して手放し、AIなど機械への依存を深めれば、技術の進歩は人間の可能性を押し広げる方向にではなく、縮小する方向へと進んでいってしまうと思います。

週刊新潮 2023年4月27日号掲載

特集「『核兵器』以来の発明 『ChatGPT』は人類の『神』か『悪魔』か」より

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