欧米が規制強化、中露によるサイバーテロも懸念 ChatGPTが抱える最大のリスクとは?
台湾政府は中国製の対話型AIを警戒
米国発の最新技術は、欧米各国で波紋を広げる一方で、ウクライナ侵攻を機に連携を強める中露にとっては“福音”となっている。
その影響は、厄介な隣人を抱えるわが国にも及ぶ恐れがあるというのだ。
「中国でも対話型AIの開発が進んでいます。『文心一言』などが有名ですね」
とは、先の三上氏である。
「もし中国当局がこの技術を手にすれば、入力データから国民を容易に監視できる。反政府的な質問をすれば、拘束される可能性もあります」
言論弾圧のみならず、中国政府のプロパガンダを流布するのにも有効だと指摘するのは、外信部デスクだ。
「台湾政府は、中国製の対話型AIを警戒し、自国開発を急いでいます。台湾では選挙になると、独立派候補を落選させるため、中国政府がSNSで世論工作を仕掛けているとの疑惑が絶えないからです」
対話型AIなら、中国の国益に適うメッセージを自然な形で大量に作れてしまう。いともたやすく“世論”を形成できてしまうのだ。
「ロシアが、2016年の米大統領選でトランプ有利の世論工作を仕掛けた話は有名ですが、ウクライナ侵攻でもフェイクニュースを流す彼らが対話型AIを駆使すれば、敵国言語を流暢(りゅうちょう)に操るサイバーテロが本格化します」(同)
詐欺に流用されてしまう
中露の友好国・北朝鮮は、サイバー犯罪で不正に外貨を稼いでいるが、彼らの共通の敵はわが日本である。
卑近なところでいえば、日本国内でも社会問題化している“ネット詐欺”が増加する可能性があるという。
「これまで架空請求などを行うための『偽メール』はあまたありましたが、日本語に不慣れな外国人が作成したものは、ある程度は見分けがつきました。ところが、『チャットGPT』では“督促状”や“アカウント変更のお願い”などのメール本文を自然な日本語で作成できるので、高齢者などが簡単にだまされる恐れが高い。将来的には、尖閣諸島や北方領土などの問題でも自国に有利なネット世論の形成を画策する可能性もあります」(警察庁関係者)
日本を狙う周辺国にとっても、有効な“飛び道具”と化しつつあるのだ。
[5/5ページ]