AIに精通する起業家「松本勝」インタビュー「Chat GPT社会を生き抜くためにこそデザイン思考が必要です」

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「デザイン思考」とは

――そういう、実務ではない部分でこそ、「デザイン思考」が役に立つということか。

松本 まさにその通りです。デザイン思考とはもともと、デザイナーさんたちが、デザインを行う上で使っている思考法なのです。それをビジネスに転用したものが「デザイン思考」と呼ばれています。そもそも「デザイン」という言葉には、問題解決の意味が含まれています。問題解決といっても、一般的な、学校のテストのような、すでにある問題を解いて正解を導き出す、というものではありません。まず、企業や個人に「こうありたい」「こうしたい」という理想がある前提で、そのためには何が問題となるのか、その問題をまず創造していく。つまり、「問いを立てる」ことが何より重要なのです。

――具体的には。

松本 例えばコンサルタントが、製造業の顧客のところにいって、具体的に、「最近は売上が良くないから、どうにかして上げたい」と相談を受けたとします。従来型の問題解決の思考だったら、問題は、「売上が減っている」であり、解決は「売上を上げる」になります。すると、解決策として出てくるのは、「製造コストのカット」や、「製品の価格改定」といった、ありきたりなものばかりになってしまう。

これからの仕事は、「いい問い」を立てること

松本 一方、デザイン思考では「売上を上げたい」という欲求の裏に、何があるのかを考える。なんで売上を上げたいのか、その先に何があるのか。本当に売上を伸ばすことが解決につながるのか……。相手に共感しながら、顧客本人すら気がついていない課題やニーズを探りあて、その上で解決策を作ってゆく。それがデザイン思考です。

――この思考法がなぜ、AI時代に重要になってくるのか。

松本 先述した従来型の問題解決は、実はAIでもう、事足りるんですね。むしろAIの方が、膨大なデータから素早く、もっとも最適な数値を見つけて、提案できる。一方、デザイン思考は、AIが最も苦手とする作業なのです。つまり、ユーザーの欲求を理解し問いを立てる、ということです。AIは統計学をベースに構築されているため、もっともらしい平均的な解を導き出すことはできますが、問いそのものを生成することは、今のところできていません。いい問いを創造すること、それこそがデザイン思考と言えます。私の著書には、実践的なデザイン思考のステップが書かれていますので、興味のある方はぜひ手に取ってみてください。

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