ソフトバンク、4軍制の次は「ユース世代」へ…王貞治会長の肝いり「ホークス・メソッド」とは一体何なのか?

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全125ページの“教科書”

 ソフトバンクが、アマ野球界との「縦のつながり」を深めていくという「将来図」も見据えた上で、選手育成・指導方針の根幹となる「ホークス・メソッド」を編さん、この“虎の巻”を今後、さらにアップデートしていくという方針を固めた。【喜瀬雅則/スポーツライター】

 4月13日に行われた小5、6年生を対象とした「ホークスジュニアアカデミー」の開校式で、そのコンセプトが公表された。三笠杉彦GMによると、今回の“教本策定”は、2020年頃から球団内でその構想が浮上したといい、王貞治球団会長をはじめとした各部門のフロントスタッフら数十人に入念なヒヤリングも行ったという。ここから抽出された指導のエキスともいえる内容を、全125ページの“教科書”にまず、まとめるという。

 この指導方針の大前提として掲げられたのは、指導者の役割として「主役(選手)の意志を尊重し、一人ひとりに粘り強く寄り添う」という一大コンセプトで、三笠GMもヒヤリングの際に「大事なポイント。そういうコメントをさせて頂いた」と明かしている。

「主役は選手である、というところは、ホークスの文化としては大事にしたい。フロントでも、監督・コーチでもなく、選手が主役で、選手がチームなり、今の野球を作っている。その選手の長所を伸ばして、それを皆さんに披露して、また成長していくというところをホークスは大事にしていることだと僕自身は思っています」

 こう説明した三笠GMとともに、福岡県春日市の県営春日公園野球場で行われた開校式には、王貞治球団会長も多忙なスケジュールの中、わざわざ足を運び、ジュニア選手たちを前に7分近くにわたり、直接の激励メッセージを送った。

「自分なりに目標をしっかり考えて、自分から目標に近づいていかないと、目標からは下りて来てくれないよ」

「聞きたいことがあれば、手を挙げて、どんどんコーチに聞いて下さい。有効に生かそうよ、この時間をね。君たちに野球がうまくなってほしいんですよ」

キーワードは「選手が主役」

 未来のホークスを担うかもしれない逸材たちを前に熱弁をふるった王会長は、球団スタッフによると、今回の“メソッド策定”に非常に熱心だったという。この「選手が主役」というのは、王会長が今年2月の宮崎キャンプで、ソフトバンクの選手たちにも繰り返し、力説した、今回の「キーワード」でもある。

「日本の今までの教育の仕方というのは、上から教え込むという感じだったけど、実際は下から、教えてもらう方が、こういうことを自分が知りたい、という風にやるのがいい。習う方が主であるというのが、僕は成長の中では一番大事なことだと思います」

 そう語る王会長は、メソッドへの“思い”も相当に強い。

「今ははっきり言って、野球の世界というのは、メソッドというか、こういう形でやったらいいよという『教本』みたいなのはないんですよ。それぞれの教えている人たちが、自分の経験で、自分が理解した理論的なことや練習法を教えているんで、まちまちなんですね。やはりそれは、子供たちにとってもよくない変なクセがつくと、なかなか直りにくい。そういうことをしないように、なるべく近道、というわけじゃないんだけど、後で時間がかかるようなことにならないように、教える側がしっかりと意識してやらないと。だから、これをどんどんやりながら、メソッドをもっといいものにして、なおかつ広く、それをやってもらうことによって、早くレベルを上げる。目標を持った選手たちが一人でも多くなってくれるようにね。僕らも野球を通して、いい人生を歩んでこられたので、少年たちにも大きな目標を持って取り組んでほしい。そして、このメソッドを早く、もっともっと中身の充実したものにしたいと思っています」

 そこには「選手時代にも監督時代にも見てきたし、自分の経験もあるし、人の成長も見て」という、王会長自身の長き野球人生における経験の裏付けはもちろんだが、将来の野球界への提言としての意味合いが、このメソッドに込められている。

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