YMO「伝説の海外ツアー」を松武秀樹氏が語る BEHIND THE MASKの演奏で重大なトラブルが…その時メンバーはどうしたか

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背中で感じた熱狂

 ロスでのライブという奇跡が現実のものになったのは、YMOの3人を筆頭に関係者が実績を重ねて信頼を勝ち取り、強固な人間関係を構築していたからだという。

「ライブの話が出る前から、幸宏さんはチューブスのメンバーと親しかったんです。だから前座での出演もスムーズに決まったのでしょう。川添さんもトミー・リピューマと何でも言える関係だったから、全てをネゴシエートすることができた。マダム・ウォンでの単独ライブは、こんなに観客を詰め込んで事故が起きないかと心配するほど満員で、演奏する坂本さんの足元に観客がいるような状態でした」

 ロスのライブで松武さんは、聴衆が熱狂する様子を背中で感じ取っていた。

「もちろん何が何だか分からないんですけれど(笑)、背を向けていても観客が喜んでいるのは伝わってきました。演奏した曲の大半はインストゥルメンタル。歌を歌わずに成功したバンドなんて、それこそベンチャーズぐらいでしょう。ましてシンセが奇妙奇天烈な音を鳴らしたわけですが、ロスの観客は夢中になってくれた。細野さん、幸宏さん、坂本さんにはスタジオミュージシャンとしての要素が強いわけですが、それでもロスの演奏は大成功を収めた。まさに前代未聞の出来事でした」

 ある種のロックバンドには酒やドラッグがつきものというステロタイプなイメージが根強いが、YMOは全く無縁だった。

「ロスでのツアーでも、2回目のワールドツアーでも、3人は普段と全く変わりませんでした。ツアー中、アルファレコードやA&Mが主催する会食会が開かれ、その時はみんなで食べて呑んで楽しく話をするわけです。それでも、めちゃくちゃに酔っ払うということはなかった。ケンカすることもなく、ハチャメチャなことなど何も起きません」

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