YMO「伝説の海外ツアー」を松武秀樹氏が語る BEHIND THE MASKの演奏で重大なトラブルが…その時メンバーはどうしたか
川添象郎の陣頭指揮
松武さんは細野さんのマネージャーから「ロスに飛んでください」と言われた。松武さんがいなければ演奏は不可能だから当然の渡米だったが、それでも現地で細野さんから“立ち位置”を指示されると驚愕したという。
「僕のような役割のメンバーは、普通、ステージには上がらないですよね。ステージの脇で演奏しながらマニュピレーションを担当するはずです。ところが細野さんの指示で、ステージの真ん中に日本から運んだシンセサイザーが組み立てられ、幸宏さんの横に座れと言われたわけです。おまけに機器の関係から観客に背を向ける格好になった(笑)。僕は最初、『いや、いいですよ!』とステージに上がるのを固辞していたんですが、細野さんが『いやいや、行ってください!』と一歩も退かなかったんです」
YMOは何よりシンセサイザーが主役のバンドだと、細野さんは聴衆にはっきり伝えようとした。松武さんは「細野さんはプロデューサーとしても類い稀なセンスを持っていたことが分かります」と言う。
セールスプロモーションに関しては、やはりロスに乗り込んだ川添さんが陣頭指揮を執っていた姿を、松武さんは間近で目撃している。
「ロスのグリーク・シアターで演奏すると、現地の撮影クルーがライブ中にカメラを回していました。観客が熱狂してくれたから、YMOは前座なのにアンコールがかかった。こんなのはあり得ないことでしたが、それが映像としても記録に残った。すでに川添さんとNHKの間では話がついているようで、川添さんは『NHKのニュースでこの様子が放送されるからな』とグリーク・シアターで明言していました」
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