監督交代で低迷…阪神・佐藤輝明に重なる「藤浪晋太郎」の姿 見習うべき選手はいるのか?

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「特殊な環境」でプレーしている

 では、阪神の有望選手が苦しんでいる理由はどこにあるのだろうか。在阪スポーツ紙の記者は、「一つの要因」として以下のように話す。

「プロ野球のチームのなかでも、巨人と阪神は他球団と全く注目度が違いますし、番記者の数が圧倒的に多いです。巨人戦が地上波で中継されることはかなり少なくなりましたが、関西ローカルでは、阪神戦の中継はまだまだ多い。スポーツ紙や情報番組でも、阪神の話題が日常的に大きく報じられています。同じ関西が本拠地のオリックスがリーグ優勝して、『やっとメディアの露出は阪神の10分の1くらいになった』と話していた選手がいましたが、決して大げさな話ではありません。そんな球団で活躍すれば、メディアの対応や“タニマチ”と言われる人との付き合いが増えますし、野球に集中することが難しくなります。また、監督やコーチだけじゃなく、あらゆるOBも口を出してくる。こうしたなかで、結果を残し続けることは、やはり簡単ではないでしょう。佐藤が苦しんでいるのも、そういう影響は、少なからずあると思います」

 筆者は以前、阪神で活躍した井川慶氏に話を聞いたことがある。井川氏は、野球以外の付き合いはほとんど断り、あえて周りから“変人”だと見られることで自分を守っていたと話していた。また、入団時に大きな注目を集めていた鳥谷敬氏は、1年目のキャンプは一切外出禁止で、あらゆる“誘い”から球団が守ろうとしていたと話していた。それだけ、阪神の選手は「特殊な環境」でプレーしているということだ。

“格好のお手本”となる選手とは

 では、佐藤はどうすればいいのか。前出の報道関係者は、4番バッターの大山悠輔を参考にすべきではないかと語る。

「今のレギュラー野手の中で、最も自分のペースを崩さない選手は大山悠輔選手ではないでしょうか。入団した時の注目度やプレッシャーもかなりのものがあり、指導者やOBからもいろんなことを言われたはずですが、それでも大きく低迷することなく、結果を出すことができている。プライベートな付き合いの部分までは分かりませんが、少なくともグラウンド上では周囲からのあらゆる声に惑わされることはなく、自分のやるべきことをやるという姿勢が常に変わらないように見えます。監督が代わっても結果を残すことができている理由の一つには、そういう面があるのではないでしょうか。岡田監督も大山に厳しいことを言うことはありますが、結局、大山に4番を任せ続けている。大山の野球に対する姿勢を評価しているからでしょう。佐藤にとっては身近な“格好のお手本”だと思います」

 大山は入団5年目の21年に故障もあって成績を落とし、昨季の開幕時点では7番に降格となるなど苦しんだ時期があった。それでも3年連続で20本塁打をクリアし、昨季はキャリアハイとなる87打点をマークするなど、成績を残し続けている。左右の違いはあるものの、同じドラフト1位で中軸を任されている打者として、佐藤にとっては参考とすべき点は多いはずだ。

 佐藤がこのまま藤浪、高山のように低迷してしまうのか、大山のように踏みとどまることができるのか……。阪神の今季、そして将来を左右する大問題だけに、今後の佐藤のプレーに引き続き、注目していきたい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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