あなたの“不満”がカネのなる木に! 「不満買取センター」に有名企業が熱視線を送る理由

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生活者主体でビジネスが動く時代

“あなたの日常にある不満を買い取ります。不満の中に眠った「ヒント」を私たちが届けます”

 まるで『笑ゥせぇるすまん』の喪黒福造が口にしそうなキャッチコピーを掲げるアプリがある。「不満買取センター」は、日常の中の些細な不満を投稿することでポイントを獲得でき、500ポイントごとに500円分のAmazonギフト券と交換することが可能だという。

 たとえば、「パソコンのキーボードにホコリが溜まってしまうので蓋ができるキーボードを発売してほしい」、「スーツケースのタイヤは交換できるようにすべき。本体はまだまだ使えるのにタイヤだけのために粗大ゴミで捨てるのはもったいない」という具合に、自分が感じた不満を投稿するだけだ。

 登録・投稿・ポイント交換・退会は、すべて完全無料。会員登録後、すぐに不満を売ることができるとあって、2015年のサービス以降、現在、会員数は70万人を突破しているというから驚きだろう。【我妻弘崇/フリーライター】

 だとしても――。なぜ、不満を投稿するだけでポイントを獲得でき、サービスとして成立するのか?「怪しい」といぶかしむ人もいるかもしれない。

「かつては、企業が作ったものを生活者が買うといった供給者と需要者の関係でビジネスが成り立つケースが多かったと思います。しかし、今はモノがあふれ、さまざまな手段で情報を得ることができるようになったため、生活者の方が詳しくなっている。SNSで発信しトレンドになるケースも散見するように、生活者自身がメディアになっています。供給と需要という関係性から、企業と生活者がパートナーとなり価値を生み出すという時代に変わってきています。生活者が持っている思いを考えたとき、その一つが生活者の不満やモヤモヤでした」

 こうサービス誕生の背景を教えるのは、「不満買取センター」を展開する株式会社Insight Techの伊藤友博代表だ。企業主体でビジネスが動いていた時代から、生活者主体でビジネスが動く時代に変わってきたからこそ、「不満」はアイデアの「種」になる可能性を秘めていると話す。

AIが“不満”を分析

 Insight Techでは、買い取った不満を「アイタス」という文章解析AIに読み込ませることで、不満をもとに生活上の、あるいは社会の課題を分析するという。その分析・傾向を企業や行政機関に、サービス改善や商品企画のための情報として提供することで収益化しているそうだ。

「不満買取センター」とだけ聞くと、なにやら怪しい響きを感じるが、その実情は今の時代ならではのコンサル的サービスというわけだ。味の素やライオンといった有名企業も活用しているため、いぶかしがる必要はなさそうだ。

 不満は15文字以上から受け付け、一人1日につき10件まで投稿できる。独自の査定AIで、不満を10段階で評価し、その評価に応じて、最大10ポイントが付与される。

「なぜそう感じたのか、具体的な不満を投稿すると評価が高くなりやすい」と伊藤代表が語るように、単に「値段が高い」「味が悪い」といった感情だけの不満は評価が低くなる。なお、公序良俗に反する不満や誹謗中傷になりかねない不満は評価の対象外だ。現在、1日に約2万件の不満が投稿されるというが、それらすべてをAIが判別。テクノロジーの進歩もあって、こうした前代未聞のサービスが可能だという。

「コロナ禍以降は特に顕著なのですが、生活者の皆さんの不満を観察していると、“心地よく暮らしたい”というメンタルの変化を感じます。心地よく暮らすための改善点を投稿するという印象です。実際、コロナ禍になってから、『不満買取センター』の会員数も急増したのですが、生活者側も不満をはじめとした自分が抱いている気持ちを聞いてくれることに対して価値を見出していると感じています」(伊藤代表、以下同)

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