阿佐ヶ谷姉妹は末永く愛されるコンビになると思うワケ

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距離感が実に絶妙な2人

 当時からすでにテレビにも出始めていた売れっ子の2人だが、エッセイで描かれる私生活は実につつましい。六畳間にこたつを挟んで布団を2つ並べて寝ていた。

 あるときには、美穂が自分の布団だけをシングルからセミダブルに買い替えたため、江里子は自分の布団を敷くスペースが狭くなったことに不満を感じた。そんな同居生活におけるちょっとした小競り合いなどが、淡々とした筆致でユーモラスに描かれていた。

 阿佐ヶ谷姉妹の2人は、仲が良さそうだが決してベタベタしていない。

 お互いがビジネスパートナーとしても友人としてもお互いを必要としていて、親しみも感じているのだが、近づきすぎてうんざりしたりするところまでは行かない。距離感が実に絶妙である。

 2021年にはこの本がドラマ化された。芸人の執筆した日常エッセイがドラマという形になるのも異例のことだ。

 ネタでもトークでも唯一無二の面白さを備えていて、歌も上手いし、演技力もある。阿佐ヶ谷姉妹の芸人としての能力は全般的に高い。にもかかわらず、優等生的なお高くとまった雰囲気が一切ないのが彼女たちのすごいところだ。今後も末永く愛されるコンビとなるだろう。

ラリー遠田
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)など著書多数。

デイリー新潮編集部

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