“濃い味付け”は子や孫にも悪影響、塩分の70%は「加工食品」から 今すぐ減塩すべき理由とは?

ドクター新潮 ライフ

  • ブックマーク

体の塩分を極力排出しないように進化

 面白いことに、この塩分濃度は、人間だけでなくネズミやウシ、カエルだってみんな0.9%。誕生したばかりの脆弱な生命体だった40億年前に自分たちの体を守るため、そう条件付けられてしまったのです。海水の方は40億年の時間が経つうちに陸地の岩塩などが溶け込んで3.5%まで塩分濃度が上昇している。なのに、われわれは40億年前と同じ塩分濃度を保ったままここまで来てしまった。

 塩分濃度に限らず体内の成分というのは常に一定に保たれていて、例えば塩分濃度が0.8%になっても1.0%になっても人間は死んでしまいます。体内の成分は常に一定になるよう極めて正確にコントロールされているんです。

 われわれは体内で塩を生成することはできませんから、塩分濃度を0.9%に保つためには、当然、一定量の塩、正確にはナトリウムを体内に取り込むことが必要になります。

 ところが、われわれの祖先が海から陸に上がった3億年以上前、外の世界には塩気のある食べ物なんてほとんどありませんでした。そこでわれわれの体は、取り込んだ塩を極力外に排出せず、体内にため込もうとするようになった。これを可能にしているのが、腎臓の再吸収という機能です。

バスタブ1杯分の血液を濾過

 一方、腎臓にはもう一つ忘れてはならない重要な働きがあります。それは老廃物の排出、つまりいらなくなったものを「おしっこ」として出すということです。

 この再吸収と老廃物の排出という機能はいわば表裏の関係にあるもの。腎臓というのは非常に働き者で、1日に150~180リットルもの血液を濾過しています。ただ、最終的に尿として排出される老廃物はせいぜい1.5~1.8リットル。つまり腎臓は毎日休むことなくバスタブ1杯分の血液を濾過し、その99%を尿細管から再吸収して、残り1%の100倍に濃縮された毒素だけを尿として体の外へ排出している。

 このような腎臓の働きはよく全自動化された「オートメーション工場」に例えられます。血液が濾過され、尿細管というベルトコンベアを通るうちに「ナトリウムはこれくらい取って下さい」「カリウムはこれくらい……」「水はこれくらい……」という指示が出され必要な成分がどんどん再吸収されていく。私たちは汗をかく日もあれば下痢をする日もある。それでも腎臓の再吸収と老廃物の排出という機能によって、塩分をはじめとした体内の成分は正確無比に保たれているのです。

次ページ:1日に濾過される塩分は1.35キログラム

前へ 1 2 3 4 5 次へ

[3/7ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。