MLBでも使い手は2・5%…「投手・大谷」を躍進させる新魔球「スイーパー」の威力は?

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「変化球投手」に変貌した大谷

 そのスイーパーだが、投げられるMLB投手は全体の2・5%しかいない。パイレーツのミッチ・ケラー(27)、ロイヤルズのブラッド・ケラー(27)、ブレーブスのマックス・フリード(29)もその使い手とされるが、球速は130キロほど。130キロ台後半の大谷のスイーパーは突出した存在と言っていいだろう。

「通常のスライダーより親指をボールの下側にして握るんだそうです。スライダーとはボールの握り方が異なるので、新しい変化球とし意識して投げ分けているんだと思います」(現地のメディア関係者)

 大谷も自信を持っているのだろう。昨季の全投球のうちスイーパーが占める割合は37%だった。しかし、今年4月11日のナショナルズ戦で投じた92球を見ると、スイーパーは51球で全体の55%。スイーパーを中心に、直球、スライダー、カーブなどを織り交ぜている。メジャーリーグ1年目の2018年は約半分が直球だったことを考えると、「投手・大谷」は完全な変化球投手に変貌した。

 NPBの日本人最速は2016年に大谷がマークした165キロであり、WBCでも160キロを超える剛球を投げ込んでいた。「真っ直ぐも速い変化球投手」と言っていいだろう。ひと昔前であれば、「変化球投手=直球は速くない」といった感もあったが、大谷はそのイメージも完全に塗り変えてしまったわけだ。

「大谷の飛躍は、シーズンオフのトレーニングによるものと言われています。18年10月にトミー・ジョン手術(靱帯再建手術)を受け、20年に復帰しましたが、その年は痛みとの戦いでした。20年のオフ、シアトルにある野球トレーニング施設ドライブラインで動作解析に基づく練習をし、投打ともに自身に合った体の動かし方や、直球と変化球のレベルアップのヒントを得たとされています。20年のサイ・ヤング賞投手で今季DeNA入りしたトレバー・バウアー(32)も、この施設で練習しています」(前出・米国人ライター)

「投手・大谷」の長所はメンタル面にもあるようだ。昨季、味方打線の援護に恵まれず、救援投手が打ち込まれて勝ち星を逃すことも何度かあったが、ワールドシリーズ覇者のアストロズとは5度対戦して全て1失点以内に抑えている。ポストシーズン・マッチに進出したマリナーズ戦にも3試合に先発し、防御率は0・95だった。「強豪チームに挑む強いメンタル」がこうした数字に表れており、「勝ちたい」とする思いがスイーパーの習得につながったのかもしれない。

 昭和や平成の時代にも「曲がり幅の大きいスライダー」はあった。だが、解析システムが進んでいなかったため、コーチが選手に言葉で説明しても伝わらないことが多く、習得は難しかった。習得に必要なトレーニング方法や体の動かし方を数字で説明できる環境がも整い、大谷はスイーパーの使い手となった。

デイリー新潮編集部

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