【ペンディングトレイン】赤楚衛二と正反対…悪そうに見える山田裕貴の“特別な持ち味”とは
電車の車両が未来に行ってしまうTBSの連続ドラマ「ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と」(金曜午後10時)が第2話まで終了し、物語の全体像が見えてきた。主人公は協調性がなく身勝手な萱島直哉(山田裕貴・32)。統率力があり、乗員乗客の命を守ろうとしている消防士・白浜優斗(赤楚衛二・29)ではない。どうしてなのだろう?
山田と赤楚の役柄は正反対
つくばエクスプレス線の流山おおたかの森駅(千葉)から秋葉原駅(東京)に向かっていた電車の車両がタイムスリップし、乗客乗員68人が未来へ行ってしまった。少なくとも30年先だ。
車両の周囲は山や土砂、野生林。水も食料はない。狼狽して感情を剥き出しにする乗員乗客に対し、赤楚が演じる白浜は助け合いを呼び掛ける。
白浜はまず自らが実践。贈答用だったフルーツ詰め合わせを全員に提供した。
「食べませんか」(白浜、第1話)
第2話では水探しに率先して動き、危険を顧みず絶壁を登って水源を発見。まぶしいぐらいに良い人である。
もっとも、主人公が山田扮する萱島なのは知られている通り。萱島は粗野な男で、他人のことなどお構いなし。ペットボトルの水とお茶を独り占めにしようとしたセコイ会社員・田中弥一(杉本哲太・57)のことはハサミで脅した。
それにとどまらない。乗客乗員の命を助けようとしている白浜に対し、萱島は「助ける? 思い上がるなよ。世の中そう甘くねーよ!」(第1話)と嫌味を言い放った。2人はまるでコインの裏と表だ。
半面、萱島が主人公であるのはうなずける。人間臭く、魅力的な面があることが、徐々に明らかになってきたからだ。
車両が未来へ行った日は、萱島の12歳年下の異父弟・達哉(池田優斗・17)が綾瀬少年刑務所から出所する日だった。萱島は勤務先の美容室のオーナー・三島すみれ(山口紗弥加・43)に対し、出迎えには行かないと話していたが、本当は足を運ぶつもりだったのだろう。
乗っていた電車は北千住駅を経由する。そこから1駅先が達哉のいた少年刑務所のある綾瀬駅だからだ。なにより、達哉からの手紙に対する萱島の涙が胸中を表していた。第1話の終盤だった。
萱島は達哉から「やり直したいんです。兄ちゃんと一緒に」という手紙を受け取っていたものの、未来に来ているので出迎えられない。このままでは出所後の面倒も見てあげられない。それを嘆いた。
「なんでこんなところに。何してんだよ。助けてあげられねぇよ……」(萱島、第1話)
親を早くに亡くした萱島は新聞配達をしながら達哉を育てた。本当は愛情深い男なのだろう。
第2話の萱島の言葉が印象的だった。未来に来てしまった理由を「戦争でも起きたんだろ。それか大災害か。はたまた謎のウィルスか」と推察した。周囲が「そんなバカな」と言うと、声を荒げた。
「みんな起きてたことだよ! みんな見ないフリをしていただけ!」(萱島、第2話)
世の不作為の罪と無関心をなじった。現実的な男で、問題意識は強い。偽善者ならぬ偽悪者であり、苦労人だから簡単には人間を信じられないのだろう。
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