「余命わずかな父との穏やかな時間がきっかけ」 ファッションの世界にいた福田春美が「ブランディングディレクター」という仕事にたどり着いた理由

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東京に戻って一気にブランドを企画

 私は元々料理や器は好きだったものの、父が好きな器の世界と自分の好きなそれは全く違うものだと思っていた。けれど、実家に長く滞在することで、父の書斎にある本たちが、自分が興味を持っているものと同じだと分かったり、介護などしたことない自分がアロマオイルを買ってきて、むくんだ父の足をマッサージしたり、心地よいアンビエントの曲をかけたり、父との静かなコミュニケーションが心地よく尊かった。

 そこから穏やかに旅立った父。家族も不思議と爽やかな気持ちでやり遂げた感もあり、初七日を終えて、東京に戻った時に一気に香りのブランドのプランを考え、ファッション以外のブランディングを考え、人生で初めて営業をかけた。そこから、香りのブランド、器や道具などのストアを手がけ、今はホテルや茶寮などのブランディングを手掛けさせていただいている。

 いろんな人生のつまずきがあって、ここに来れた。最近ハマっている中国茶の香りと湯の落ちる音を味わいながら、そんなことを考えている。

福田春美(ふくだ・はるみ)
1968年北海道生まれ。ブランディングディレクター。著書に『ずぼらとこまめ』(主婦と生活社)など。

デイリー新潮編集部

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