長嶋茂雄が残した数々の珍プレー 敬遠球を“大根切り”でランニングホームランも記録

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3度のアピールアウト

 長嶋茂雄巨人終身名誉監督の現役時代の人間味あふれる“ミスター伝説”を3回にわたって紹介するゴールデンウィーク企画。第2回は「珍プレー編」と銘打ち、ビックリ仰天させられる中にも、ミスターらしい、ほのぼのとしたムードも漂う珍プレーの数々を紹介する。【久保田龍雄/ライター】

 ベース踏み忘れで本塁打がパーになったり、計3度にわたる“三角ベース事件”など、珍プレーのエピソードに事欠かない長嶋だが、対戦相手のベース踏み忘れも3度にわたってアピールアウトにしている。

 まず1959年4月22日の大洋戦で、三塁打を放った岡田守雄の一塁ベース踏み忘れを三塁から目撃してアピールアウトを取り、64年4月30日の大洋戦では、伊藤勲の右前安打で二塁から生還した森徹の三塁ベース踏み忘れを指摘して、得点を無効にしている。そして、3度目の71年6月24日も同じ大洋戦だった。

 1対0とリードした6回の守り、1死二塁で中塚政幸が中前安打を放ち、二塁走者・飯塚佳寛が生還、1対1の同点になったかに思われた。

 ところが直後、長嶋が「飯塚の右足が三塁ベースから10センチも離れていた」とアピールすると、手沢庄司三塁塁審はアウトを宣告し、大洋の得点は幻と消えた。

 アピールプレーで流れをガッチリ引き寄せた巨人は、その裏、長嶋の左中間上段への一発などで決定的な3点を加え、4対0と快勝した。

「オレもやったことがあるから、簡単にごまかされんよ」

 バットと目の両方で勝利に貢献した長嶋は「オレはいつも見てるんだけど、飯塚の奴、まったくベースに触れずにまたいで行っちゃった。アンパイア(手沢塁審)の顔を思わず見たら、“触塁を怠って行っちゃった”という顔だ。よし、この顔ならいけると思って、ワンちゃん(王貞治)にボールを投げさせたんだ。オレは新人時代(58年9月19日)、広島戦でホームランしながら、一塁ベースを踏まずに行ってパーにした経験がある。オレもやったことがあるから、簡単にごまかされんよ」と得意満面で解説した。

 その一方で、「ホームランなら、バッターの仁義で知らん顔してやるが、あの(1点差の)場面でタイムリーじゃ、そうもできん。だから、“こういうこともあるさ”と、(飯塚を)慰めてやったんだ」と人情味のあるところも見せていた。

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