春の「深夜ドラマ」はなんと21本に 勝者は「ヤクザ」「不倫」「法廷」の日テレ系3作品
深夜ドラマ(午後11時以降に放送開始するドラマ)が、3月までの15本から4月以降は21本に増えた。中でも話題を集めているのが日本テレビ系の3作品。不倫サスペンス「夫婦が壊れるとき」(金曜深夜0時30分)、ヤクザ界のヒーローたちの物語「日本統一 関東編」(木曜深夜0時59分)、法廷エンタテインメント「勝利の法廷式」(同夜11時59分、読売テレビ制作)である。視聴率も上々だ。
【写真を見る】「夫婦が壊れるとき」で“挑戦的な不倫相手”を演じる優希美青
稲森いずみがコワイ「夫婦が壊れるとき」
「夫婦が壊れるとき」の主人公は、クリニックの副院長を務める内科医の真壁陽子(稲森いずみ・51)。小さな映像制作会社で社長を務める夫・昂太(吉沢悠・44)、息子の凪(宮本琉成・12)と完璧な暮らしをしていると自負していた。
しかし、昂太のマフラーに茶色い女性の髪の毛が付いていたことから、不安にかられ、疑念を抱き始める。
昂太の行動をマークし始めると、予感は的中する。ポーチの中に避妊具を隠し持っていた。資産家の娘・理央(優希美青・24)と不倫していたのだ。理央は妊娠している上、昂太に陽子との離婚を迫っていた。
その上、自分と昂太の共通の幼なじみであり、今は同僚医師の相沢佳奈子(内田慈・40)が不倫の隠蔽に協力していたことが分かる。陽子から昂太に関する不安を打ち明けられた佳奈は「大丈夫」と笑い飛ばしながら、昂太には陰で警戒するよう伝えていた。愛情も友情も見せかけだったことに陽子は衝撃を受ける。
「私が完璧だと思っていたこの世界はウソまみれだった!」(陽子、第2話)
ここから陽子の反撃が始まる。佳奈に対しては「どっちの味方!」と強く詰め寄り、協力を約束させた(第3話)。昂太には冷めたい口調で「ねぇ、女いるよね?」と直球を投げ込む(第4話)。
今後は陽子による昂太と理央への復讐が始まるのだろう。昂太は周囲から「逆玉」と呼ばれる立場だった。それなのに陽子を裏切った。
理央は24歳で小悪魔的なところがあり、妊娠中にわざわざ陽子の診療を求めてきた。挑発である。陽子が2人にどう報復するのかが見ものだ。
4月28日分の視聴率は個人1.0%(世帯1.9%)。プライム帯(午後7時~同11時)とは基準が大きく違うので、数字だけ記してもピンと来ないかも知れないが、同じ日のフジテレビ「ぽかぽか」(平日11時50分)は個人0.7%(世帯1.4%)。「夫婦が壊れるとき」が真夜中の放送であることを考えると、かなり良い視聴率である。
その上、同局の有料配信動画サービス「Hulu」の会員増にも貢献しているのは間違いない。そもそも各局が深夜ドラマに力を入れるのは、自局系の有料配信動画サービスの品揃えを増やしたいという意味もある。1週間程度で配信終了となり、利益も小さい見逃し無料配信動画サービス「TVer」より、有料配信動画サービスに目が向いている。
このドラマはイギリスのBBCが2015年に放送し、大ヒットした「Doctor Foster(女医フォスター 夫の情事、私の決断)」のリメイクなので、ストーリーの面白さは折り紙付き。2020年には韓国でもリメイクされ、やはりヒットした。
現在の民放はコア視聴者層(13~49歳)を重視しているため、稲森ら年齢の高い出演陣だと、プライム帯での放送は難しい。だが、内容はプライム帯の作品と見比べても全く見劣りしない。また、ソフトな仕上がりにせざるを得ないプライム帯の作品では物足りぬ視聴者も取り込める。
本編にはない展開「日本統一 関東編」
「日本統一 関東編」は文字通り異色作。2013年から計55作(正編)がリリースされているヤクザVシネマの超人気作を、ドラマに落とし込んだ。
「日本統一」のドラマ版は、2022年にフジテレビ系列の北海道文化放送が「北海道編」を放送したものの、在京キー局で流れるのは初めて。ヤクザがゾロゾロと登場する作品であるため、放送前にはファンの間から「東京の地上波でやれるのか?」と不安視する声もあったが、心配無用だった。
ヤクザ同士の抗争はなく、ややマイルドな仕上がりになっているものの、本編の持ち味は保たれている。主要登場人物もほぼ一緒だ。
そもそも本編自体、大半のヤクザVシネマと違い、ヤクザ界を舞台にしたヒーローものなのだ。本宮泰風(51)が演じる「侠和会」の若頭・氷室蓮司と、山口祥行(51)が扮する同会本部長三代目川谷組組長・田村悠人が、タチの悪いヤクザやアウトローたちを次々とぶっ潰す。市民に迷惑を掛けるヤクザや地面師、手形パクリ屋などである。ワルが栄えないから痛快でヒットに結び付いた。
「関東編」も氷室たちがワルと戦っている。相手は連続殺人犯グループ。特定の人物に強い恨みを持つ者から依頼を受け、復讐殺人を行い、犯行実行後は依頼者を犯行グループに引き入れている。
発端は「侠和会」八王子支部の電話番が殺された事件だった。この男をかわいがっていた田村は怒りに燃える。当初は敵対する組織の犯行と思われたものの、違った。やがて連続殺人であることを突き止めた。
目を引くのは本編で見られなかった新しい展開になっているところ。氷室と田村が熱血刑事・島拓也(青柳翔・38)、同・早見亮太(藤原樹・25)と緩やかに連携した上で、ワルを追っているのだ。
本編にも氷室と田村に好意的な刑事こそ登場したが、手を組んでワルを倒すことはなかった。「関東編」は本編よりヒーローもの色が強くなっている。
刑事たちの心を動かしたのは氷室のこの言葉だった。
「あんたら容疑を固めて令状を取らなきゃ、動けねぇだろ。それじゃあ遅い」(氷室、第4話)
氷室たちは法に縛られず、世の中のためにならないワルを滅ぼす。今回は連続殺人犯グループのほかに宗教色のある巨大マルチ商法組織も潰すことになりそうだ。
4月20日の視聴率は個人0.6%(世帯1.2%)。20歳から34歳までの女性の個人視聴率であるF1も0.7%あった。「日本統一」側はファン層を拡大し、日テレ側は深夜ドラマと「Hulu」ラインナップを充実させた。
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